『エンパイア・オブ・ライト』
監督🎬
【サム・メンデス】
ヒラリー
【オリヴィア・コールマン】
スティーヴン
【マイケル・ウォード】
ノーマン
【トビー・ジョーンズ】
スティーヴンの母親
【ターニャ・ムーディ】
同僚
【トム・ブルック】
エリス支配人
【コリン・ファース】
配給[ウォルト・ディズニー・ジャパン]
本編[1時間53分]
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英国が舞台の英米映画。
監督のサム・メンデスは1999年のデビュー作『アメリカン・ビューティー』で衝撃デビュー。
この頃、主演のケビン・スペイシーの活躍が飛び抜けていましたね。(今はハリウッド追放危機ですが)
その後、『007』シリーズ、2019年『1917』で全編ワンカットの戦争映画を監督し、手がける作品は注目度が高く「賞レースに絡む監督」という認識が出来ています。
1980年代初頭の英国(イングランド)の港町が舞台。
女帝マーガレット・サッチャーのサッチャイズム政策のしわ寄せにより労働者会は混乱を極め、世界恐慌以来最悪の失業率に英国民は陥る。
このドラマは、その背景を説明はしませんが、描いている内容は欧州では有名のようです。
私はよく皮肉的に書きますが、欧米が製作する歴史映画は、描く映画の時代背景を説明しないんですよね。
これについては欧米諸国はこの手の歴史は、知っていて当然だから無駄を省くのだろうという見方がされています、
知っていることを改めて説明されるのは、面倒だということ。
私は日本人ですから、日本の義務教育では、英国の人種差別の歴史や意識やストライキなど教わらずに学校教育を終えます。
世界史が得意科目だったので、教科書に掲載されていることは頭に入れましたが、テストのために覚えた知識なので説明できる自信はないです。
現在も続くアメリカの黒人差別問題についても、学校では必要以上には教わりませんし、人種差別の歴史について熱心に教えてくれる指導者も学校現場にはいない気がします。そういう教師は教育現場から排除される時代でしょう(^_^;)
欧米映画で「知っていて当然」みたいな進行をされるのを見ると、私は無知を思い知りますが、それと同時に欧米と日本の教育が違う事も知ります。
この映画は、白人の女性と黒人の青年の恋愛物語仕様のドラマです。
白人女性は中年(40代?)独身で鬱病。
黒人男性は大学を諦めた青年(20代)。
肌の色だけでも差別描写としては(1つの作品作りとしては)十分なのに、そこに「年齢差」や「精神疾患」など差別される対象が、いくつか盛り込まれた設定になっているので見所は多そうです(^_^;)
恋愛映画としての知識は理解力だけで充分ですが、ある程度、歴史や時代背景の知識が必要になると思います。
では楽しい映画の時間ですv
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1980年
イングランド ロンドン南東部ケント州の港町マーゲット。
湾岸のエンターテインメントエリアに建つ映画館「エンパイア劇場」で働く女性社員の出勤風景から映画は始まります。
彼女の名前は【ヒラリー】。女優や役の見た目から、年齢は40代後半だろうと推測します。
鍵番を任されているので立ち位置的にフロア長になると思いますが、映画の中で役職は説明していなかったと思います。女性スタッフでは年長者でベテラン風。
映画開始からワンカットずつヒラリーの性格と毎日のルーティンを丁寧に伝えていていくのが印象的です。
自宅での朝の様子。眠れず天井を見つめる様子。出勤してポップコーンマシーンのスイッチを付けて、ストーブでパンプスを温める様子など、1つ1つに意味をもたせる演出になっています。
仕事に望む意識の高さ、劇場で働く姿勢は、映画ファンとしても観ていて嬉しいですね。
ヒラリーを演じるのは2018年『女王陛下のお気に入り』でアカデミー賞主演女優賞を受賞した【オリヴィア・コールマン】[49]。英国女優は世界的演技派が多い。
そんなコールマンを・・鑑賞中「誰かに似ているなぁ」と考えていて、答えを見つけて一人で納得していました。
(杉田かおるさんに似てるんだ!!)
ヒラリーは感情の起伏が少ない物静かな女性ですが、冒頭に精神科医の診察を受ける場面があります。
どうやら精神病院に入院し、退院後に職場復帰をした模様。
精神科医の診察は、処方した薬や近況などの質問で、ヒラリーは淡々とその問いに応じていきます。
処方されているのがリチウム剤ということなので鬱病であることが分かりました。
主人公が心に疾患を持っているのが、この映画のキーだと思っているので、それを踏まえた上でこの映画を前半から観ていくことをオススメします。
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業務がスタートします。楽しい映画の時間です。
数名のスタッフ数が、各自のポジションに就く。チケット売り場、売店、チケットもぎりは両脇の階段に1名ずつ。
職員の休憩場所。お調子者がいたり、ロックな女性がいたり、明るく賑やかな雰囲気です。
ヒラリーは入口手前の椅子が指定席になっていて、スタッフ同士の和気藹々の様子を静かに同化して座っています。
ここで日常のシーンに急展開。
休憩が終わり、各自がそれぞれの持ち場に移動するため腰を上げると、
ヒラリーは支配人のエリスに呼ばれ、彼のオフィスで性行為を行います。
他の従業員もおそらく知っているのでしょうけど、このことに関しては誰も何も言いません。
ヒラリーは嫌がっておらず、だけど望んでもいない。彼を愛してもいない、しかし都合のいい女にはなっている。
性的被害という被害者的な描写はしていませんが、エリスの都合だけで体を求められるので可哀想には思います。
エリスを演じるのは【コリン・ファース】[62]
コリン・ファースも2010年の『英国王のスピーチ』でアカデミー賞主演男優賞を受賞しています。
英国の王様(ジョージ6世)と女王様(アン王女)を演じアカデミー賞を受賞した「英国を代表する俳優」の共演という事にもなりますね(^o^)
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ある日。エンパイア劇場に新入社員が入ります。バイトなのか社員なのか雇用形態は分かりません。
黒人青年【スティーヴン】。
後に建築科を目指し大学に行きたいが挫折をしたと紹介されます。
エリスから彼の教育係に任命されたヒラリーが、業務内容や施設内を指南していきます。
本当に立派な劇場で、まるでコンサートホールのよう。スティーヴンと共に観客の私も感動します。
スティーヴンは立入禁止区域を指差し「この上は何?」と質問。「今は使われていないシアターがあるわ。」
「行きたい!行きたい!」とスティーヴン・・・子供みたいというより、上司に対する新入社員の態度ではないですね(^_^;)
まぁ・・恋愛映画に発展するので、立入禁止区域は禁断の恋への入り口に。
エンパイア劇場の外観は映画で分かりますが、内観は1階エリアとシアターの紹介だけですから、中がこんなに広いとは想像出来ません。最盛期は4つのシアター。現在は2スクリーンで、1階2階部分を使用しているよう。
使われなくなった廃スクリーンは、広く開放的なカフェテラスと鳩や野鳥の休憩場と化しています。
この2人、特に上司のヒラリーに関して、結構時間を自由に使っているように見受けます。
若い新入社員の青年の好奇心に付き合いますが、他の社員が自分の仕事をしている時に、使われなくなったシアターに数十分。
上映開始時刻はいつなの?
仕事中にこんなところで時間潰していていいの?など、私としてはプロフェッショナル的な疑問感が生じてしまいます(^_^;)
そこで翼の折れた鳩を見つけ、両手で包み込み介抱するスティーヴン。
鳩は「自由の象徴」なので、劇中のセリフでは語りませんが、生きづらい差別からの開放を想像させるシーンとして描かれているのでしょう。
ヒラリーに鳩を渡す際に距離が近かったり、スティーヴン役を演じる黒人俳優【マイケル・ウォード】[25]が、ヒラリーに限らず対人相手のシーンは口を少し開けて、見下ろす目線になるので、少し・・やらしかったです(笑)
自分の履いている靴下を翼の折れた鳩のギプスにして、ヒラリーの母性もくすぐり、治療の経過を診るために2人で立入禁止区域に行く口実にもなる。
この2人がお似合いか?で考えると、母と息子の年齢、上司と部下の姿にしか私には視えませんが、
どちらも「隙だらけ」なので、隙間を埋めるようにお互いを必要としたのでしょう。
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大晦日。
1980年、日本だと除夜の鐘に紅白歌合戦がこの時代は定番ですが(笑)
英国の港町だと、年越しの瞬間に打ち上げ花火で新年を祝います。
(紅白に変わるTV番組って英国にあるのかな?)
同年代のスタッフ同士でカウントダウンパーティーに行っていたスティーヴンが劇場に戻ってきて、門番のヒラリーを誘い屋上で年越しを迎えます。
カウントダウンの声出し、夜空に満開の花が咲き、スティーヴンにしたキス。
ごめんなさい。。とその場から逃げ出すヒラリーに、スティーヴンが口にする「いいんだよ。」
そして交際が始まります。
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立入禁止のカフェテラスで体を交え、時にはバスに乗って海水浴に出かけたりする。
(まるで生徒と引率の教師みたい)
「年齢差」や「肌の色」に関して私は違和感を持ちますが、2人は驚くほど気にせずに一緒にいます。
このバスでも、手を繋いでいる2人に、乗客がジィーっと観ているシーンが用意されていましたが、
英国の人種差別って、アメリカのように直接的な暴力ではなくて、差別相手を蔑んで見たり、エンガチョするように距離をとったりするイメージが私にはあります。
目が合っても視線を逸らさずにジィーっと見ているから、こういう描写が一番心の表れを表しているのでしょね。
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スティーヴンと恋愛関係になり、彼女の心も落ち着いていましたが、このビーチのデートで再発します。
さっきまで笑っていたのに、突然怒り出す。どこに引き金があるのか分からない。
砂浜に作った建築科志望のスティーヴンの完成度の高い砂の城を、突然崩壊し出すヒラリー。
(美術スタッフの力作がΣ(゚Д゚))
その時期、エンパイア劇場は超話題作のプレミア上映を行う劇場に選ばれました。
作品名は『炎のランナー』。後にアカデミー賞作品賞を含む4部門を受賞した名作です。
大ヒット確実視で話を進めていますが、実際に当時はこの作品に対する公開前の評価が凄かったのでしょうね。
エリス支配人は南イングランドで一番の映画館でこの作品を上映できる!と地位と名誉を手に入れるわけで意気込んでいます。
当日のゲストは市長は勿論、ポール・マッカトニーなどの超ビッグネームもセリフの中にありました。
だがその時期に、ヒラリーは精神の不調で自宅に引き篭もるようになっていました。
この準備期間中に起きた再発、目にした光景、その後の内容などは是非劇場でご覧になってください。
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物語紹介は以上です。
この映画を観ていて、いくつかの部分に疑問を感じました。
まず、ヒラリーの欲望、とくに性欲の部分が、異様に強いということ(^_^;)
「精神疾患を抱える中年女性」という設定があるので、多少の違和感を持ちます。
40代後半の女性ということで、更年期という影響も主人公像に生じてくると思われますが、常に情緒不安定に映ります。
求められれば嫌とは言えず、だけど静かに一人で生きていたい。そんな中で出会ったのが20以上年の離れた黒人の青年。
彼の存在は精神病院から退院した彼女が、社会復帰に踏み止まれる酸素になっていきます。
事情(経緯)を知る劇場スタッフの仲間は、最初距離をとって見守っていましたが、ロッカールームで談笑するなど段々と彼女の空気を作っていきます。
しかし本人は常に不安で、天井を見つめているなど静止しているシーンなどは、前兆があって何を考えているのか、観客に頭の中を読まさないほど物静かに小さく微笑んでいます。
1980年代の映画館が舞台です。
彼女の職場復帰を受け入れたエリス支配人は、そんな彼女と不倫関係にあります。
ヒラリー自身は独身で、過去の男に対して我慢をしてきたとの本音が、中盤のプッツン時に発せられています。
「ヒラリー、話があるから、この後ちょっと部屋に来てくれ」とスタッフが集まるロッカールームで伝えていますが、
エリスの目的がエロスであることは他のスタッフも分かっているはず。
(上手いこと書いたね)
「欲」があるということは「人間らしい」とも言えます。
エリスは自分の権力あ威厳を本能のままに使っていて、ヒラリーが彼の要求を拒むと、「妻とは長いことセックレスなんだ」と彼女がこういえば同情するなど性格を、ある意味よく理解しています。
そんなヒラリーもレストランに一人で食事をし席につくと、エリス夫妻が来店し鉢合わせの危機。
ヒラリーは彼の立場を気遣って奥様に見つからないように退店するシーンがあります。あくまでも彼を自分のものにしたい欲はない。お互いに愛していないことも分かります。エリスもエリスだけれど、ヒラリーもヒラリーだなと思うシーンでした(^_^;)
今後が注目される黒人俳優【マイケル・ウォード】[25]演じるスティーヴンは、新入社員の挨拶後で指導係になったヒラリーと恋に落ちます。20以上年の離れた女性なので、マザーコンプレックスが強い男の子なのもしれませんし、恋に理屈は必要ないのかもしれません。ちなみにスティーヴンは同年代の黒人女性という相手がいますので、どうしてこうなのったのか?考察も必要です。
スティーヴンは、日本人の私からすれば、馴れ馴れしい初日の態度です。
劇場の設備やスケールに感動した後、立入禁止区域の旧劇場に入ることを願います。
駄目よ、と言われて、お願いお願い、で願いが叶います。
これが指導係が男性の場合は、こういうふうに「立入禁止区域を見せてください、お願い先輩〜!」なんて頼んだのかな?
上階部分は現在使われていない劇場とカフェテラスがあって、湾岸沿いの建物ですから鳥たちが住み着いている状態です。
そこで棚の上で動きがない鳩を見つけたスティーヴンが、両手を伸ばし鳩を抱きかかえます。
このシーンで、両手を伸ばしズボンからシャツの裾が出たスティーヴンの脇腹がチラッと映り、ヒラリーは生唾を飲みます。
えっ・・(^_^;) さっきまで何の関心もない新入社員君だったのに・・肌をチラリズムで見た瞬間に発情したの(^_^;)
この部分は精神医学や心理学の話になりますが、ヒラリーの原動力になったのは間違いありません。
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映画は精神病院から退院し時間が経過した状態から始まり、職場復帰後にスティーヴンと出会い恋をするのが「前半」。
まるで開き直るように感情のまま発言するヒラリーの野生感は「中盤」以降に全面的に表れますが、誰かに干渉されたくないという前半の描写を強くしたほうが理解できるのだけどな。うつ病患者(メンタルヘルス)というテイで描くなら、これだと対人依存しているように視えます。
一概に鬱病と言っても各々症状が違うので、暴走の中でも理性があるヒラリーは個性的でした。
また性の場面は結構ありますが、遠目からの映像だったり、状況説明だけに徹底していました。
肌の露出に関しては、演出なのか、オリヴィア・コールマン側のNGなのか? いずれにせよR指定にならないのは納得です。
またオリビア・コールマンの繊細な演技を堪能したのは、精神状態を表していると思う、見た目の七変化です。
見た目は年相応。50前後の英国女性。
お母さん(母性)のように映るときもあれば、オバちゃんのように映るときもあり、お婆さんのように映るときもあり、恋する女性に映るときもある。
このシーンの評定なんて、まさに相手を愛しいと思う、恋するレディーですよね。
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ヒラリー役を演じるオリビア・コールマンには何の不満もありませんが、設定と脚本には少しだけ注文をつけたいです。
設定を盛り込み過ぎという印象です。
「メンタルヘルス」の中年の「独身女性」、上司と「不倫関係」、「黒人」の若者、「年の離れた恋愛」関係、「中年の白人女性と若者の黒人男性」。
(世間体という角度からは、この作品は描いていないようです。)
そのどれも意図は分かるのですが、設定を1つ2つ消した場合は、この映画は名作になったのではないか?と鑑賞者として勝手に残念に思っています。
例えば、他のキャストに、その役を担わせて(分配し)準主役級のキャストを登場させるなどしても良かったのでは?
「主人公」と恋人の「黒人青年」だけに重い荷物を背負わせているような感じがするから窮屈に感じるわけで、荷を軽くしてほしかったです。
また中盤に、サム・メンデス監督の手腕なのかエゴなのか分かりませんが、
精神病院に再入院するヒラリーに代わり、スティーヴンが主人公に変わる時間がありますが、結果中途半端になるので主人公(視点)を中間で交代するなら、全体的に徹底してほしかったです。
1980年代の戦後最悪の失業率の英国という状況下で、正社員で雇用されている2人の社会的弱者、という着眼点は素晴らしい映画造りですが、前半ヒラリー、後半スティーヴンという視点の分け方のほうがしっくり来たはずです。
または、ヒラリーを主人公に徹底して欲しかったとも思います。
精神病院の中のシーンはなく、その部分でスティーヴンの視点に切り替わるようになっていますが、精神病院内でのヒラリーの様子(態度)も相当私にとっては気になるので、この映画では視せていない部分を、映像で観せて欲しかったです。
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物語を紹介する記事の中でも書きましたが、業務中に性行為を行ったり、プロ意識に欠ける部分が何箇所かありました。
「お客様は神様です」の意味を勘違いしているような白人の常連客が、チケットもぎりの黒人スティーヴンに飲食物の持ち込みを注意され、空気が張り詰めるシーンがあります。
チップスを食べながら入場する客に「すみませんが、劇場内は飲食(持込)禁止ですので、ご飲食は入場前にお済ませください」と丁寧に伝えています。それで「これは俺の朝食だぞ!」と訳のわからない言い分で通過しようとするオッサン(^_^;)
スティーヴンは駄目ですと見過ごしません。素晴らしい劇場スタッフの対応だと思いますが、これによりオッサンは苛ついた態度に出て、館内の空気をピリつかせる。
「お客様どうなさいましたか?」とヒラリーが駆け寄って、トラブル回避の対応をする。
結局、オッサンは、彼の目を見ながらその場で飲食を済ませるのですが、
スティーヴンは耐えきれず、劇場を飛び出してしまいます。
それを追いかけて説得するヒラリー。差別を受けた従業員を追いかける上司、という見方も出来ますが、業務時間内に職場から飛び出す行為は、プロ意識としてはどうなのかなぁと思ってしまうのは私だけでしょうか?
人目にも付きますし。せめて従業員のロッカールームに逃げる選択肢もあったのではないか。
(この場面は、差別どうこうより、こういう周りを不快にする客は、世界中に不特定多数いるので、サービス業の方は特に大変だと腹立たしい気持ちで同情しました。)
ただ、こういう扱いを受けるシーンは今作品の中では稀で、
世間は戦後最悪の失業率により、黒人が働いていることに抗議や暴動が起きているけれど、
劇場スタッフにスティーヴンを差別意識で見ないし扱う者はいません。観客も視線を送る人はいたかもしれませんが、あからさまに態度で差別を示すのはこの時の常連客だけでした。
逆にハリウッド映画みたいに、スタッフの中に差別意識があるいじめっ子キャラ的な人物がいても映画的には良くなると思いますが、英国の人種差別は奥深いので実際にはもっと陰湿なのかもしれません。
私個人の意見としては、英国の黒人差別映画を観る機会があまりないので、もっと具体的に描写だったり、何が行われていたのか映画を使って再現してもいいのではないかと望みます。
スティーヴンに関しては、黒人差別の紹介役を担っていると思います。
終盤には「ホワイトパワー・スキンヘッド」という白人至上主義集団がデモ行進をして、非常にショッキングな映像が用意されていますが、1980年代という近代でイングランドで黒人差別が過激化していたという事実に衝撃を覚えます。日本の学校では習いませんから、馴染みがないぶん衝撃波も大きいはず。
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ここでも少し紹介しましたが
描いている背景など、鑑賞前に知識を入れておくと、映画鑑賞の役に立つと思います。
1979年 英国総選挙でマーガレット・サッチャー[1925ー2013]が保守党を大勝に導き、新自由主義的な政策を開始。
俗に言うサッチャリズム政策。
この政策により貧富の格差が生まれ、世界恐慌以降最悪の失業率を記録します。
映画の開始は、そんな国民が混乱に陥っている1980年から始まっていて、翌年の春辺りまでが時代背景になっています。
かつてメリル・ストリープが演じたことでも記憶に残っていますが、「鉄の女」と呼ばれたマーガレット・サッチャーという英国首相のことを、英国の国民はどう感じているのか?
少なくとも、黒人であり、この映画の弱者たちは評価していないように視えます。
おそらく高い評価を得るように創られた映画ですが、表面的には規模が狭く、劇場全体を巻き込んでほしかったです。
話は変わりますが、
英国に旅行や留学に行った人から話を聞くと、やはり今でも人種差別というものは存在するので、個人としては英国は大好きな国ですが、反面で差別する国という認識も持っています。
臭いものに蓋をするではないけれど、
日本人には馴染みのない英国の近代史の中でもカテゴリーが人種差別になるので、よりハジメマシテの知識となりました。
エンパイアというカタカナを聞くと、ニューヨークの『めぐり逢い』などでも舞台になったエンパイア・ステート・ビルを連想します。タイトルからして名作の恋愛ドラマを予想したのですが・・あなたにはどう感じるのでしょう?
ちなみにEMPIREは「帝国」という意味ですから、エンパイア劇場の名は「帝国劇場」になりますね。
帝国劇場だと凄いタイトルですが・・映画の題名は『Empire of Light』、直訳すると「光の帝国」。
劇中の登場人物たちは光を見つけたのでしょうか。
【トビー・ジョーンズ】[55]演じる勤続40年の映像技師ノーマンが、光の粒子を銀幕に届けるギフト。映画を愛する人にとっては、いつも光があると想像すると嬉しいものです(*^^*)
2月23日公開。
久しぶりに公開1週目に載せることが出来ました(^o^)
劇場の土地にもよりますが、そこまで混雑はしないと思います。
周りの座席に観客がいないシネコンで、静かに浸るように鑑賞することをオススメ致します。
港町が舞台ですが、凪のようで、それでいて波が立つと心を攫って行ってしまうような作品でした。
脚本 14点
演技 14点
構成 14点
展開 14点
完成度14点
[70]点
【mAb】