『ノースマン』
副題『導かれし復讐者』
監督🎬【ロバート・エガース】
アムレット【アレクサンダー・スカルスガルド】
グートルン王妃【ニコール・キッドマン】
フィヨルニル王【クレス・バング】
オルガ【アニャ・テイラー=ジョイ】
ホーヴェンディル王【イーサン・ホーク】
ヘイミル【ウィレム・デフォー】
ソーリム【グスタフ・リンド】
配給[パルコ=ユニバーサル映画]
本編[2時間17分]
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遅くなりましたが今年最初の記事となります。本年も宜しくお願い致します。
年明けからは昨年に公開された映画を何作品か劇場で鑑賞して過ごしました。
変なこだわりを持つ書き手です。昨年中に公開された映画は、12月だとしても新作映画として書く気持はございません。
役所広司さん主演の日本映画『ファミリア』が2023年度公開としては初めての劇場鑑賞になりました。
1月は新作映画が少ないので、シネコンで公開されればロングランはほぼ確定。機会があればファミリアを書きたいと思っていますが、有言実行できていないので確実なことは言えません。
鑑賞に至るまでの自分の経緯を書きます。
怠慢により年々、最新映画をチェックしないようになりました。
サイトを検索して作品の存在を知ることも少なくないです。
何度となく書いていますが、私の通うシネコンは3つ。TOHOシネマズ、MOVIX、ユナイテッド・シネマ。
3社ともアプリをスマホに入れていて、劇場鑑賞が出来る日になるとアプリを開いて3社のアプリサーフィンします。
ネットで指定席を購入することが多くなりました。自分の観やすい角度の席(映写機の下)を確保しておきたいからです。
今年は新作の洋画がかなり少ない。1月は普段はライバル同士のシネコンも同じラインナップ。「何か(観たいと思える作品は)ないかな?」と。
そこで見つけた『ノースマン』。アクション・ダークファンタジー。
TOHOサイトの作品紹介から
>9世紀、スカンジナビア地域にある、とある島国。
若き王子アムレートは、旅から帰還した父オーヴァンディル王とともに、宮廷の道化ヘイミルの立ち会いのもと、成人の儀式を執り行っていた。しかし、儀式の直後、叔父のフィヨルニルがオーヴァンディルを殺害し、グートルン王妃を連れ去ってしまう。10歳のアムレートは殺された父の復讐と母の救出を誓い、たった一人、ボートで島を脱出する。
数年後、怒りに燃えるアムレートは、東ヨーロッパ各地で略奪を繰り返す獰猛なヴァイキング戦士の一員となっていた。
その時の気分が、あまり難しく考えたくなかった(頭を使いたくなかった)ので気軽に観れる洋画ドラマを探していたのですが、
筋肉隆々の男たちが繰り広げる歴史スペクタルのアクションと、舞台地が10世紀頃のアイスランドと、映画とは不馴染な土地に興味が惹きました。(冒険ファンタジーのロケ地としては北欧はよく使われますが)
大陸から離れたアイスランドが、この時期に入植されたということはウィキペディア先生で読んだことがあります。
中世は西洋が「世界の中心」という考え方だとは言え、「氷の国」と「野獣的な筋肉」の組み合わせは個人的興味をそそります(笑)
(筋肉=南国のイメージが私にはあるので、雪国の筋肉を見てみたい。)
驚いたのがキャスト陣。
出演者がアカデミー賞の常連だったり大物クラスばかりの、とにかく豪華キャスト。
【アレクサンダー・スカルスガルド】【ニコール・キッドマン】【ウィレム・デフォー】【イーサン・ホーク】など、このメンツを見る限り単なる歴史スペクタル映画ではないだろう。売れ線のキャストではないけれど、実力派を揃えた印象。
そして、『mAbによる映画一期一会』の読者の方には、昨年1年間で1番書いた【アニャ・テイラー=ジョイ】[26]が出演していたのが決め手ということも、合わせて紹介いたします(^^)すっかりファンになりましたが、相当なペースで日本で出演作が公開されていますね、まさにJOY(歓び)。
1月期の新作映画不足で「これを観るしかないかな・・」と消去法だったのですが、アニャ・テイラーとアイスランドのワードを知った瞬間から、「これを観るしかない!」に気持ちが切り替わりました。
では始めます。
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895年「北の国」
テロップが表示。
その後、場面展開のたびに章が表示されます。
ファンタジー映画ではよく見られる展開移動の変え口です。
公式サイトのあらすじ紹介では「9世紀 スカンジナビア地域にある、とある島国」と紹介されていますので、それを参考にします。
スカンジナビア地域はノルウェー・スウェーデン・デンマークの三国を主に指します。
(現在のウクライナ戦争でNATO加入問題が取り上げられている国々でもありますね)
その地区にあるヴァイキングの港町に、オーヴァンディル王が帰還するシーンから映画は始まります。
映画では移動手段に船を使いますが、この時代によく海路を迷わず目的地にたどり着けるものだと、そちらにも興味関心を持ちます。
ちなみに大航海時代は15世紀から始まりますが、その500年も前の時代の船技術ってどういう作りだったのでしょう?映画で紹介してほしかったですね。
高台に建つ宮廷から王の艦隊を確認しているアムレート王子。
興奮しながら宮殿を走り、母親である王女に報告します。王女役は【ニコール・キッドマン】[55]。
着替え中だった王女の反応が印象に残りました。急に扉を開けるんじゃないわよ!叱るよりも睨む。
子供を躾けると言うよりも、まるで思春期の子供が自部屋のドアを急に開けた親に言うような反応だなと思いました。(ニコール・キッドマンって男性ぽい表情が多い)
王の帰還に出迎える面々。宮殿に緊張感が走ります。王役は【イーサン・ホーク】[52]。
この映画全体に言えることですが、おそらく室内も氷点下だと思いますが、あまり温度感を画面から感じないので、少しだけ作り物的な見方をしてしまいました。これから何十・何百体も殺戮合いを行いますが、凍結の遺体って・・あったかな?
王の威厳は充分。とにかく息子を大事にしている王様で、皆の前で王子を抱きかかえ父親の顔に。これを機に場の雰囲気も和みます。
その和やかな宴の最中に現れる王の弟フィヨルニル王弟殿下。目付きがギラギラした・・いかにも悪役という感じ。フィヨルニル役はデンマークの俳優【クレス・バング】[55]。
帰還の祝宴の席ということで、この場は大人しく従う王弟。
その夜。王は王子を連れて、王家の秘密の洞穴のような場所で、儀式を行います。
王は自分の退位を予見していて、その後継者にはもちろん王子を考えている。そのことを王女に相談しますが、まだ子供よ(10歳前後)と反対されていました。
洞穴ではシャーマンのヘイミル立ち会いのもと、火を囲みながら夜通し完全に野生の獣となって過ごします。ヘイミル役は【ウィレム・デフォー】[67]。
ヨーロッパの演劇という感じがします。日本の舞台では、まずここまで獣になりきれる演技に出会えないでしょう。
そして朝方。地上に出てくる父子。
感覚の研ぎ澄まされた王子が雪という自然物に舌を出して悦んでいる背後で・・父親である王様が暗殺されるのです。
実行犯は王の弟フィヨルニル。王様は死に際に辞世の句のような言葉を告げた後、首を切り落とされます。
フィヨルニルは自分が王になるため、王位継承者となる王子を殺さねばなりません。
「捕まえて、殺せ!」必死に逃げるアムレート王子。城ではフィヨルニルの手下が、王に忠実な国民の殺戮を行っていて皆殺し状態。
父親の死を目撃して間もないアムレート王子は、さらなる衝撃な光景を目にします。それは母親の王妃が眼の前で連れ去られていく光景です。マザー!と声を出せば見つかり殺されてしまう。今は逃げるしかない。アムレートは声を殺して海岸へ走る。
そしてボートに乗り込み、大海原へ逃走します。王子ですが王国に味方は誰一人としていません。
(都合よく逃げた先にボートがあった感じもしますけど(^_^;))
目的(キーワード)となる合言葉を復唱しながらボートを漕ぎます。「父親の仇を討つ!母親を取り戻す!フィヨルニルを殺す!」と。
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第二章。数年後、表記。
数年後。ロシアでヴァイキングの一員となっていたアムレート。
ヴァイキングは8世紀末から約250年間に渡って、東ヨーロッパで略奪や殺戮を繰り返していた組織・集団です。
そういう時代があったと考えれば納得できますが、女子供も躊躇なく殺すので見ていて辛いものがあります。
これまでヴァイキングといえばヨーロッパの盗賊団というイメージが私にはありましたが、
この映画を観る限りだと、現代で言うオスマン帝国やソビエト連邦みたいな感じなのかな。
アムレートもヴァイキング帝国の王族の子孫ということなので、ヴァイキングが管轄する何処かの国の王子なのだと思います。知識が少なくて想像で書いていますが、すみませんm(_ _)m
身分を隠して、ヴァイキングの戦闘員となっているアムレートは「ベオウルフ」という別名で、次々に村を襲っていきます。
映像は迫力満点。槍(斧)と盾を持ちながら猛突進。
ヴァイキングの攻撃を予測するのは難しく、突然襲いかかってくる半裸の猛獣軍団に、村の兵士は慌てて防御のための攻撃をするしか術がない。
弓矢を交わしながら突っ込んで、防壁をよじ登り村に侵入すると、そこからはあっという間、斬り合いが始まる。
アムレートの特徴は男以外(男は基本誰も兵士)の殺生はしないことでしょうか。殺るか殺られるかの世界なので常に修羅場ですが、敵を斬った後は次の敵が現れるまで他の村人には手を出さず息を整えます。
ヴァイキングは百戦錬磨。攻撃されたら最後だと思い知りました(^_^;)。
そして、ここが重要。村を陥落させたあとは、生き残った村人たちを鉄鎖に繋いで奴隷にします。
村を襲撃して→奴隷を集めて→その奴隷を各地の王族の元へ送る。
奴隷は主に女子供。老人は置いていくのでしょう。
奴隷の反乱を起こさせないために兵隊の男連中を最初に殺して、闘争心の無くなった男は奴隷として連れて行っていました。
西洋や北欧出身の彼ら(ヴァイキング)が、中欧や東ヨーロッパ(ロシアなど)を侵略し、奴隷として同盟国へ連れ去っていたのは歴史の1ページ。
(500年後。大航海時代になるとコロンブスなどの奴隷商人がアメリカ大陸に黒人を連れて行く)
奴隷となった者達は無抵抗です。これからどう足掻いても奴隷という立場は変わらない。
戦争と同じ。降参したら捕虜となる。
襲撃前までは普通に生活していた筈ですが、一瞬にして立場が変わってしまうのは・・可哀想過ぎますね(^_^;)
勝利の宴は火を囲み、肉を喰らい、闇の草むらでは女と体を交える様子。そして狼のように獣として吠える。
(あの可愛かった王子が・・・ってか数年後の設定で老け過ぎじゃない?Σ(゚Д゚))
こういう部分は野性的ですが、システムは文明的。
村を侵略、占拠したあとは、捕まえた村人を奴隷にし、ヴァイキングの幹部たちにより、王家の領地へと振り分けていきます。
兵隊要因の男・器量の良さそうな女性はS国へ。
それより落ちる奴隷はA国へ、B国へ、という感じで振り分ける。
(ふと字幕を見るとキエフのことをキーウと表記していました。1年前の字幕だったらキエフなのでしょうね。)
奴隷の振り分けを背中で聞いていたアムレート王子が振り向き、兵士に聞く。「今なんて言った?」
奴隷の行き先が父親の仇であるフィヨルニルの国だと知り、復讐心が沸騰。
父親を暗殺し国王の座に就いたフィヨルニルは、その後、大陸から離れた彼の地「アイスランド」の島国で羊飼い同然になっているということ。
このシーンの説明が不足していて残念です。
兵士が言うには、その後、別の王家の人間が女王となって、フィヨルニル新王は他の地域に移って国を築いたとのこと。都落ちみたいな感じなのかな?
てっきり宮殿に戻って復讐劇を繰り広げると予想していたので、冒頭アムレートがいた地域が現在どうなっているのか?も映画で紹介してほしかった。
この兵士の会話を聞いていなければ、これまで通りヴァイキングの戦闘員として生きていった(感じだった)アムレートですが、この情報と、【ビヨーク】演じるスラブ族の巫女の導きによって、復讐だけしか考えられなくなる。
(オスカーを賑わせた『ダンサー・イン・ザ・ダーク』の主演女優。お久しぶりの銀幕は・・目がなかった(^_^;))
この映画は時代劇中にシャーマンなどのダークファンタジー要素も随所に差し込まれるので、鑑賞者も切り替えが大事だと思います。
復讐を誓い故郷を立ってから数年。
ヴァイキングの幹部からも一目置かれるようになっていた戦士アムレート。
北欧白人ヴァイキングの特徴である金髪で長髪。
その長い髪を切り落とし(それでもセミロング)奴隷の焼印を鎖骨の下に自ら付けて、アイスランド行きの奴隷船に乗り込むのです。髪を切ったくらいで同僚に気付かれなくなるのだから、案外、見た目重視なのかも知れませんね。
9世紀のスカンジナビア地区は、北欧三国に加えて、フィンランドやアイスランドを含みます。
私の勝手な想像ですが、ヴァイキング軍はゲルマン・デンマーク系が多いのでデンマークの位置から考えます。
アイスランドまでは1800キロ以上あり、900年代の木造船でよく辿り着けたなぁと・・そっちの驚きのほうが大きいΣ(゚Д゚)
何処から出港したのかは分かりませんが、相当過酷な船旅だったはずで・・嵐のシーンや、陸路到着時に水死体などは描写で用意されていましたが、この船旅を省略してしまうのは、かなり勿体無い気がします。
(時代も場所も違いますが、日本で遣唐使や遣隋使の船旅だけでも命からがらだったと読みます)
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ここから数十分の間隔で何章かあります。正確な章数とテロップ表記を覚えていませんm(_ _)m
奴隷船でアムレートは運命的な出会いをします。同じ奴隷の【オルガ】です。
オルガは巫女の能力を持っているスラブ人(東欧系)で、奴隷として紛れ込んだアムレートに理解力を示す。
奴隷は話すことを禁じられているので、夜間などにこっそりと会話し、自分の目的なども伝えています。
演じる女優は前書きに書きましたmAbの大注目女優【アニャ・テイラー=ジョイ】。
これまで観てきた出演作の中で一番体を張っていましたけど、これまではオーラで演じているような印象でしたし、こうして泥臭い演技をすることで演技派になってほしいですね。
アイスランド行きの奴隷は、振り分け具合を見るに三軍(捨て駒)のような人達ですから・・
その中に、筋肉質なアムレートと、金髪白人のオルガがいると2人だけ目立つので、結構違和感でした(^_^;)
島に上陸してからは首に鎖を繋がれて、フィヨルニル王が住む地区まで移動します。
フィヨルニル王は威厳こそありますが、すっかり落ちぶれていて、小国のリーダーといった感じです。
アムレートの母親でもあるグートルン王妃との間に産まれた王子からは、どうして父さんは王様なのに羊飼いをやっているの?と疑問を持たれているくらい、王様としての圧倒的な背中は見せられていません。
(ここに至るまでのフィヨルニルの失脚の経緯も知りたいところ)
映画の内容とは関係ありませんが、ウィキペディア先生のアイスランド解説を引用します。
>定住した人類は木炭を作るために森林を広範囲に伐採した。人類が入植する前は、国土の4分の1が樺の森林であったが、19世紀まで続いた伐採により森林面積は1パーセントに減少した。入植者は牛や豚といった家畜をアイスランドに持ち込んだが、寒冷地ゆえに羊毛を目的とする羊の飼育が盛んになった。羊は植物であれば若木を含めて食べてしまうため、国土の3分の2を覆っていた植生が2分の1に減少し、アイスランドは表土の露出した荒涼たる風景となってしまった。
(丁度映画の時代だと思うので「なるほどな」と納得しましたし、人間が入植しなければアイスランドって殆どが森林だったんだと勉強になります。)
すっかり落ちぶれた印象のフィヨルニルの前に、奴隷が到着する。10〜20人ほどです。
緊張感のなかった王族や兵隊たちにスイッチが入る。奴隷を横一列に並ばせる。国王軍の数も少ないので王や王子が自ら選別します。
最果ての地まで辿り着いた奴隷たちを並ばせ、使えそうにないとその時の気分で殺してしまう。
ベオウルフ(アムレート王子)や金髪美人のオルガは生かされる。この2名だけ奴隷の中で見た目が別格です(^_^;)
甥っ子(アムレート)の顔や目を至近距離で見ても、フィヨルニルは気が付きません。(そんなことある?(^_^;))
奴隷は男は力仕事、女は雑用や性奴隷として捨て駒的に使われていく。映像描写としては描かれませんが安易に想像。
アムレートはとにかく従順に奴隷として働き、夜間になると野生動物となり目を光らせて偵察する。
ある時、北極狐に導かれて辿り着いたシャーマンにより、巨人族の剣を手に入れたアムレート。
(こういう部分で急にファンタジーになります。)
武器を手に入れ、復讐の時を心待ちにしていく。
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物語文は以上です。
リアリティのある肉肉しい映像表現のなかで、時々、スピリチュアリズムな展開を挟むのが特徴です。
巫女によるお告げが合ったり、その助言に導かれるように主人公が進んでいくロールプレイング。
あまりスピリチュアルを投じすぎるのも、せっかく物語性が高いレベルの作品なので良くないと思いますが、
海外の人からすれば、こういうのはむしろもっと過剰にしたほうがいいのかな?
こちらは完全に好みだと思いますけれど、私としては無駄に多い印象です。
とは言え、900年代初頭の話ですし、当時の西洋人がどれほど文明や文化よりも、「星」や生活に重きを置いていたのだろうと考えると楽しいです。
アイスランドということで単純にオーロラなどの映像を期待しましたが、そういう神秘的な映像ではなく、ただただ満天の星空を映画は映していたのも、おそらく意図があるんだと思います。
アイスランドは1600万年前に北大西洋に誕生したとウィキペディア先生にあります。
多くの火山があるアイスランド。最終局面ではマグマの中で両名が戦います。
大陸から離れた孤島で開拓していく王家の物語という、見方・面白さも私にはありました。
フィヨルニル王の行動を見ていると、人口を増やし国を繁栄させるという目的ではなく、自己顕示欲で王家を築いていくだけに見えます。映画の時代に、アイスランド島に別の集落や国があったのか?も知りたいところです。
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こういう映画を観ると、まず登場人物の多さだったり、ヨーロッパの馴染みの薄い名前だったりを、覚えて付いていくのに疲れてしまうものですが、
主要登場人物が少なく話も分かりやすかったのが、一番に良かったです。
主人公のアムレート王子とヒロインのオルガ。(序盤で亡くなる国王)敵であるフィヨルニル王と、母親である王妃。この4名の物語。
そこに従弟の王子であり、【ウィレム・デフォー】演じるシャーマンなど、ある程度、把握していけばスムーズに観ることが出来る作品だと思います。
(正直、役の年齢設定が不明ですが(^_^;))王女役の【ニコール・キッドマン】も良かったです。
冒頭10歳の王子がいる王妃役としては老けすぎた登場シーンだったけれど(祖母と言ってもいいくらい)。アイスランド編からは別の人格になったように表情の表現が変わっていましたし、エラの張った感じに老いを感じて、役者として円熟味を感じる。
ニコール・キッドマンと言えば、怒った時に釣り上がる目が特徴だと思いますが、何だかこの映画で一番彼女が「役を理解している」感じがしたな。
王子役の子役であり王役のイーサン・ホークであり、主演の【アレクサンダー・スカルスガルド】も一切の「我」を捨てていました。これって本当に物凄い高いレベルだと圧倒されます。
演技で我が見えると「自分を捨てろ!」と演出家から指導を受けます。
日本人俳優には多いですけど、何をやっても同じ演技にしか見えない主演役者っていますよね。
それはそれで日本らしい商業演劇としては良いのかも知れませんけど、例えば、日本人の人気俳優が縄文人の役柄を演じて縄文人に視えるのか・感じるのか?と考えると想像することが出来ません。武士には見えますが、縄文人には見えない。
映画からはそれてしまいましたがm(_ _)m 男優陣の野獣感は相当なものでした。
私のお目当てアニャ・テイラー=ジョイ演じるオルガは、紹介ではスラブ人の魔法使いと書いてあります。
限りなく人間に近い巫女でそこにリアリティーを感じますが、後半は急に魔法使いに。
出来れば徹底してほしかったかな。
傷ついた運命の男性を温泉という泉の中で治療したり、神秘的と女性的な描写は見応えがあるのですが
オルガに関しては矛盾や疑問も多いです。
こういう馬も何処から調達してきたのだろう?2人とも何も持たない奴隷だったのに(^_^;)
(父親の魂が鴉となりヴァルハラから使いを寄越す描写は感動)
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最後に、鑑賞後にiPhoneに箇条書したメモを貼り付けます。
>ヴァルハラ ヴァルキリー スラヴ人 奴隷や生贄や新略、女子供への扱いなどは、見ていて辛いものがあるのだけれど、侵略戦争の時代では当然あった描写ですし、そこまでの抵抗感はなかった。それよりも主人公含め千年前の人間の獣感だったり獣臭が秀逸で、なかなかお目にかかれない表現力だった。2時間半の尺で前中後半と分けたとして、前中の出来を考えれば、後半に突然展開を早めた印象がありそこを残念に思う。後半にまとまりがあれば、統一感は半端なかったはず。とにかく映像や役者のレベルは物凄く高いし、カメラワークも最適だが、最後は編集点の問題で私としては評価を下げた感じ。
補足として、『スカンジナビアの神話』や『アイスランドの英雄物語』『ヴァイキング伝説』などを組み合わせて着想した物語で、もう脚本家とすれば、羨ましいくらい自由ですけど、ヴァルハラ(北欧神話における主神オーディンの宮殿)やヴァルキリー(ワルキューレ;戦場で生きる者と死ぬ者を定める女性)など神話ベースなので、その知識を入れておくと鑑賞に役立つでしょう。
演者の表現力とカメラワークがずば抜けて秀逸に思えます。
残酷なシーンも多いですがスプラッターにはせずに、名優と泥臭アクションで見易く仕上げられていました。
スピリチュアルや神話などの解釈は、私より詳しい方が沢山いらっしゃいますが、思いの外、特に難しくなくて頭で考えずに、展開ごとに物語を読める映画でした。
アカデミー賞の前哨戦と呼ばれるゴールデングローブ賞が先日行われましたが、今作の名前はありません。
ファンタジーアクションは賞レースに不利ですが、もし今作がアカデミー賞に選出されるならアレクサンダー・スカルスガルドの主演男優賞ノミネートとクレス・バングの助演男優賞ノミネートを願います(^^)
脚本 13点
演技 18点
構成 14点
展開 13点
完成度14点
[72]点
【mAb】