『ビースト』
(オープニング)
深夜のサバンナの密林で銃を持った6名程のグループ。
彼等は密猟者で、銃を構えながら慎重に進んでいきます。
間もなく目当ての動物を見つけ、その標的へ一斉に銃を撃ち込みました。
シマウマを捕食していた百獣の王ライオンは、人間の武器に犠牲となるのです。
「やばい。一匹、仕留め損ねた。」
ライオンは縄張りを持ち、群れで生活する動物。
逃げたライオンが襲いかかってくる可能性が高いことを密猟者たちは知っています。
グループは二手に分かれ、逃げたライオンを始末しようとしますが、ジャングルの暗闇の中、返り討ちに合うのでした。
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(ここからが主軸)
南アフリカの小さな空港に降り立った黒人の父子3人。
アメリカのニューヨークで医者をしている【ネイト・サミュエルズ】。
娘の【メラ】と【ノラ】。
ニューヨークからロンドンを経由し、南アフリカ共和国ヨハネスブルグを更に経由する。
何度も飛行機を乗り継いで辿り着いたこの地[モパニチ]は、ネイトの故郷であり、亡き妻【アマーレ】の故郷です。
空港に出迎えに来たのは生物学者の旧友【マーティン】。
マーティンは、亡き妻を紹介してくれた親友でもあります。
夫婦がかつて暮らしていた住宅へと移動する。
マーティンが留守を守っていた住居は、彼等が暮らしていた当時の様子をそのまま残していた。
「暑いしWi-Fiもないし・・」この旅に対し最初は面倒に思っていた娘達も、母親の当時の写真を見たりするなどして、両親の故郷を体感し、有意義な時間に変わっていく。
翌日。マーティンの案内で、サバンナを観光することに。
まずはライオンの群れが生息する荒野へと移動。
ライオンの監視員をする【バンジー】を一家に紹介。彼は麻酔銃を携帯しています。
マーティンは、ライオンの子供を飼育していたことがあり、今ではその時の子ライオンが「縄張り」のリーダーとなり家族を作り、マーティンだけには懐いています。
その後。
マーティンは一家を連れて、数km離れた原住民が暮らすツォンガ村へと車で移動。
しかしそこで目にしたのは村人たちの全滅した無残な死体でした。
人間や家畜、全ての死体はいずれもライオンによるものだとマーティンは判断。
しかしどうしてだ?ライオンは意味もなく人間を襲わないはずだ。
この場からすぐに立ち去ったほうがいい。ライオンは縄張りで行動する。もし、この村を襲ったのがライオンなら、すぐ近くにいるはずだ!?
マーティンとネイトはパニックになる娘たちを車に乗せ、来た道を戻ります。
その途中にマーティンの顔なじみの村人を発見。
駆け寄ると村人【ムテンデ】は(ヴェンダ語で)言います「悪魔(ディアボロ)だ」と。
そんなバカな。しかしそうだとしたら、今この場で駆除しなければならない。
マーティンは銃を持ち、密林へと入っていきます。その際、3人には車にいてくれと伝える。
この地では「車を襲うライオンはいない」とされているからです。
この場で待っているよう指示されたネイトは、怯える娘2人を車に残し付近を警戒。
そして・・マーティンの進んだ方向から銃声が鳴る。トランシーバーの応答はない。
「マーティン!応答してマーティン!」
そんな一家の前に、姿を現す悪魔。
(上はこの場面とは違う写真です。)
果たして、ネイトは娘達を守り、生きて戻れるのか?
監督🎬
【バルタザール・コルマウクル】
ネイト
【イドリス・エルバ】
長女メラ
【イヤナ・ハーレー】
次女ノラ
【リア・ジェフリーズ】
マーティン
【シャールト・コプリー】
配給[東宝東和]
本編[1時間33分]
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9月9日公開。
公開二週目の夕方の回に鑑賞しましたが・・なんと!観客は私1人だけでした。
過去にも何度か経験していますが、贅沢な時間でした。
だけど周りの観客の反応も鑑賞中に知りたいために、一番後ろの中央席に選んでいる私としては、少し寂しかったですね。
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ありがちなタイトルだけれど、ビーストって言葉の響きは・・やっぱりカッコいい(笑)
子供の頃は学研の図鑑シリーズの愛読者でした。
現在は、調べ物をする時は主にネットになりましたけれど、その手立てを担うウィキペディア先生で、「ライオン」は何度も読んだページです。
時々、動物の生態系を知りたくなるんですよね。説明は出来ませんが、知るのが好きなんだと思います(^^)
鑑賞に入る前、劇場のポスターを見て・・
肉食動物と人間とが対決するサバイバルアクションをイメージし、
最初はリーアム・ニーソン主演の『ザ・グレイ』のような感じなのかなと思っていました。
(vs人食い狼。最初はチームだが、その後一人一人減っていく展開。)
獰猛な生物の領域に踏み入った人間が、生き延びるために戦うサバイバルアクション。
陸上だと、今作のライオン、虎、熊、ペンギン、バッファロー、サイ。
(ペンギンは無害Σ(゚∀゚ノ)ノ)
海や川を舞台にすると、サメとワニとか・・アマゾンだったらピラニアなどがハリウッド映画になっています。
グロテスクで生々しい描写が多いのも特徴ですけれど、
人間同士が殺し合いをする醜さよりも、人間と他の生き物の「弱肉強食対決」のほうが自然かなと思い、ロードショーされているとついつい観てしまうジャンルです。
(動物保護団体などの存在を意識しなければならないけれど)
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ライオンは「大きな猫」ですが「百獣の王」と呼ばれる肉食獣。
基本的に生きた動物を捕食します。
主人公一家が故郷のアフリカに帰省し、その滞在中の中で人食いライオンに遭遇するという展開になります。
主人公一家については追々紹介致します。
主人公の親友。地元南アフリカ出身で白人のマーティンは、生物学者として、生まれたばかりのライオンを保護し、成長してから野生に返す活動をしています。
彼が育てたそのライオンが、今では縄張り争いに勝ち「群れのリーダー」となっている状況もドラマがあります。
育ての親であるマーティンにだけは、リーダーになってからも心を許していて、ライオンの群れもそれを周知しているから襲ってこない。
それでも、マーティンとは主従関係があるにしても、野生動物ですしライオンですから、油断は大禁物。
最初は無闇矢鱈に近づかず、慎重に手のひらを差し出して相手の警戒心を解くため近づいていくのは、プロの技。
マーティンは丸腰ですが、他の仲間は麻酔銃を構えているし、観光している主人公一家は離れた場所から様子を見ている。
まるで戦国武将の開戦前みたい。
人間代表と群れのライオンキングが、一対一でまずは対面するという構図に見えます。
まずは自分が味方で危害を加えないとアピールする。相手の目を見ながら。目を逸らすときっと襲われる。
恐竜の飼育員をしている主人公を描いた『ジュラシック・パーク』でもこれと全く同じパターンがありますけど、「食われるのではないか?」と終始ハラハラする気持ちで観てしまいます(^_^;)
主人のもとに駆けていくライオンはなんとも可愛いものです。背中から「遊んで!」と覆いかぶさるシーンは、やっぱり「食われるのではないか?」と想像してしまうんですけどね(^_^;)
ライオンは「縄張り」というマーキングをし、そこで縄張り争いに勝利したオスが社会を作るという生態。
「縄張り」という意識を持って、映画を観ていると分かりやすいと思います。
今回、主人公たちを襲うライオンは、違う場所の縄張りで生きていたライオンです。
オープニング。
密猟者たちが夜のジャングルで獲物を食していたライオンの群れをマシンガンで襲撃し、唯一生き残ったライオンが、人間に復讐を始めるというキッカケ。
ライオンは手当たり次第、人間を襲う「野獣」となり、主人公たちも標的となるのです。
ここで、やはり思ってしまうのは、密猟者への「どうしてそんなことするの?」という憤りです。少なくとも私はそうです。
劇中の会話で、「今まではゾウやサイを密猟していたが、今はライオンを狙う」と説明していました。
ライオンは動物の頂点の象徴ですし、お金持ちや悪事を働くボスの家には、ライオンの剥製がある・・という想像をしました。
私が子供の頃に「象牙」が問題になった記憶があって、牙のないアフリカ像の映像を、テレビで観たことがあります。
なんの番組だったかは覚えていませんが、子供の頃の記憶ってそんなものですよね。なにかの1場面を強烈に覚えているもの。
だから野生動物の密猟者という存在が、腹立たしく思えて、映画を観ているだけなのに感情移入し「バチが当たればいい」と思いました(^_^;)
おそらく、こうした感情が沸点に達せば、「殺意」に変わるんだと思います。
アフリカでは「密猟者」を狙う「反密猟者」が現れ、裁きをあたえているそうです。
それを知ると、戦争と同じ仕組みに感じます。
密猟者が居なくなるのが一番の解決策だと思いますが、
密猟者を狙う反密猟者の後には、肯定派が反密猟者を襲うようになり、そうこうしている間に、元に戻れなくなる。
人間に襲われたライオンが、その後、人間に復讐する殺人ライオンとなり、そのライオンを駆除しようと動く人間が出てくる。
(劇中の主人公一家は、家族を守るための闘いなので、話は変わりますが。)
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指摘点は、劇中に言うような父と娘の関係性は、そこまで感じ取れないことです。
こういう誰かを喪失して、旅先でのトラブルを機に関係を復旧するという展開は、映画のセオリーとして数多くあります。
2人の娘は、最初から反抗的な態度を見せていないので、父親のネイトが自分でそう思い込んでいるだけなのかもな、とそう思ってしまうような描き方でした。
アフリカに降り立ち、今時の若い女子らしいスマホを片手にブツクサと文句を言っていますが、両親の暮らした家に滞在すると、姉妹は空気を肌で感じて感動している様子があります。
あとは焚き火とか、炎を前にしていると、人間って本音を言うものですよね。
焚き火をしながら文句を言っている人って、あまり想像がつかないです(笑)
出来れば欲しい劇中の情報は、アメリカ生まれの黒人の子供たちが、両親の生まれ故郷のアフリカの地に降り立ち、どう感じているのか?ということは、個人的に興味があります。
長女のメラは巨人のウォーカー外野手みたいなバンダナをしている思春期女子で、年齢は10代だと思いますが、男性が登場すると少しだけ声色を変えているような女の子でした。ライオンに襲われ動けなくなったマーティンおじさんを、父と妹と別行動で救出しにいく姿もあります。
それが恋心なのかは分かりませんが、マーティンおじさんは、きっと亡きネイトの妻のことが好きだったんだろうなと想像しています。だけど丸腰の女の子がライオンがいるジャングルに救出に行くのは・・運が良くて良かったねとしか言えませんね(^_^;)
次女のノラはアフロヘアで、襲ってきたライオンと車の下で格闘している父親のシーンで、隙を見つけ車の窓を開けライオンのお尻に麻酔針を刺すという大ファインプレイを行います。
あとは個人的に観たかったシーンがあったので紹介します。
亡き妻と南アフリカ時代に暮らしていた家には、錆びれたバイクが置いてありました。
「おぉこのバイクまだ残してあるんだ」「懐かしいだろ」と親友マーティンとさりげなく友人トークをしていて、
それを見て、劇中にこのバイクをライオンとの逃走劇に使用するのかな?と思っていました。
メーカーはBSA・バンダム。それがなかったのは少し残念でしたね。
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この作品のウィキペディアをネットサーフィンして泳いでいたら、
自分の新知識を増やしていただいたので、おすそ分けします。
今作で親子の案内人役を務めるマーティン役の俳優が南アフリカ出身の【シャールト・コプリー】[48]で、
彼は『第9地区』などハリウッド映画にも出演されているので、お顔は存じていました。
アメリカ映画を鑑賞していて、世界中の国の出身がいるんだなぁ、と思うことが多いのですが、
シャールト・コプリーはアングロ・アメリカンだと記載されていて、それって何?と無知識な私は思います。
そこからウィキペディア先生で検索してみると、イギリス諸島の国々から開拓民としてアフリカ大陸の(主に)南アフリカ共和国に渡った人のことを「アングロ・アメリカン」と呼ぶことを知りました。
ネグロイド(ブラックアフリカン(黒人))が住む地域に居住した、英語を第一言語として話す民族。
開拓民という言葉は、我が国でも歴史がありますね。北海道もそうですし、戦後ブラジルなど南米に希望を求めて移住した日本人のこともテレビなどで知ります。
そういう開拓民の二世・三世が俳優としてエンターテイナーとして、国際的に自分の故郷を紹介する事は、世界平和という心意気に私は感じます。
映画とは何ら関係はありませんが、
南アフリカ共和国に対して、私はあまりいい印象を持っておりません。
それはやはりアパルトヘイトであり、差別であり、治安であり、「恐怖や非人道的」という印象から来ています。
正直、行ったら帰ってこれないんじゃないか?という不安もあります。
だけれど自然の美しさだったり、生き物の弱肉拒食・食物連鎖の歴史だったり、強烈に惹きつけられる魅力がいくつもあります。
例に出して申し訳ありませんが、日本の女優・吉高由里子さんが芸能業を休業されていた時にアフリカを旅行され、肉食獣の捕食シーンを目の前で見て人生観が変わったと、何かの番組宣伝に出演された際に仰っていましたが、そういう湧き上がるものが母なる大地アフリカにはあるのかも知れませんね。
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家族ドラマを描いていますが、主軸である人間の家族愛よりも、ライオンの方が私にとっては奥深く視れました。
人間の家族ドラマは、妻が亡くなり、信頼関係が薄れかけている娘2人を連れて、自分と妻の故郷である南アフリカに滞在するという物語ですね。
心が離れがちだった娘と父親は、殺人ライオンとのサバイバルで、絆を取り戻していくという、まぁ・・よくあるパターンです。
ライオンドラマは、この映画には2つのグループがいて、人間に育てられた人間と共存するライオンと、
家族(群れ)を人間に殺されたライオン。
それは悲しい物語でもあります。
密猟者が野生動物たちを捕まえて、ライオンのような人間では到底かなわない獣は射殺(もしくは麻酔銃)して・・
密猟者の中にも、生活のため・家族を養うために、こういうまともではない仕事をしている人も多いと思います。
勿論。本物の悪党もいるとは思いますが、
おそらくアフリカは失業率も高く、貧富の差や差別もすごくあるので、こうした稼業も生まれるのでしょうね。
そういう密猟者を許さない反密猟者が登場するのも分からなくありません。実際にいるのでしょう。右と左に分かれ、戦争や紛争はそうした理由で始まるものです。
冒頭。後に殺人ライオンとなるライオンは、密猟者たちに家族を殺され、人間への復讐してきます。
話は変わりますが、森のなかで小熊を見つけて、可愛いと近づいたら親熊が襲ってくる、という話はよく聞きます。
群れのリーダーで、あるよる突然、人間により家族を殺された殺人ライオンの感情がどこまでかは分かりませんが、「密猟者=人間」となるので、何の罪もない人達が襲われてしまうのは可哀想としか言えませんでしたし、密猟者に対して更に怒りがこみ上げる結果になりました。
(もしかして、それが造り手の狙いかも。)
密猟者グループは二手に分かれて、映画を観る限り、リーダー格の男は車の方へ。下っ端の二人が、銃を構えながら、逃げた熊を探しに行きジ・エンド。
下っ端の一人は、いつの間にか居なくなっていた。
二人目は、人間が作った罠に引っかかり木の枝で宙ぶらりんになって、ライオンにガサッですから、皮肉も込められていました。
後のシーンで、2手に別れた密猟者の生き残りが、主人公たちと遭遇する展開があります。
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私の中で「絶対」だと確信していることがあって、それは子供は死なない。「死なせない」が正解かな。
ジュラシックパークなんて、定番中の定番です。
この映画も、命の危機・危機一髪のシーンが何度もありますが、私は子供は死なないというセオリーが分かっていながら観ています。だけれど、やっぱり嫌なものですね。
ライオンは群れで行動する生き物ですが、マーティンは結構、家族と別行動をして、子供を不安にさせています。
大人と子供という2手の分かれ方ではあります。子供は車内に避難させ、大人2人は手分けして敵を注視する。
その状況の最善策なのは分かりますけど、「パパ!行かないで!」と車中から叫んでいる娘に対して、行ってしまうというのは、観ていて結構もどかしいものがありました(^_^;)
そして、良い判断とも言えるし、悪い判断とも言えるのが、主人公ネイトの職業が医者という設定なので、
劇中は、応急処置というより、結構ちゃんとした手術を行います。
医者だから治すことを優先しますが、
いつライオンが来るかも分からない状況なので、襲われたらジ・エンドだな、なんて思いみていました。
肝心な時に無線も繋がりませんから、自分が家族を守るんだという覚悟を観ます。
最後に。
ライオンと真っ正面から戦うと勝ち目がないので、ライオンへの攻撃は、車の窓などに挟まったライオンの鼻っ柱を思いっきり蹴るしかない!
ライオンが入れない隙間に体を入れて、引っ掻こう腕を伸ばしてくるとうまく避けて、タイミングよく鼻に足蹴り。
人間がライオンの鼻をガンガン蹴っているのも印象的です。
こういう場所にということで、スニーカーではなく、おそらくブーツだと思うので、たとえライオンとは言え急所ですから結構な衝撃があると思います。足元までに意識が及ばなかったので、鑑賞される方は私の代わりに注目していただきたいです。
それでも狂ったように、本来の生態を忘れてまで人間を襲うライオンの様子は、そうさせた人間がいたからということを忘れてはいけないと、サバイバルアクションでありながら、90分台の短い時間の中で起承転結が分かりやすく収納されており、見易い映画でした。特にライオンの習性や生態をしっかり取り入れた脚本が秀逸でした。
脚本 15点
演技 13点
構成 14点
展開 13点
完成度13点
[68]点
【mAb】