前回の記事から1ヶ月近く間隔が空きました。
久しぶりの投稿になってしまい読者の方には「すまねぇ」の気持ちですm(._.)m
理由はハッキリしています。
実は3月の間は「映画館」に殆ど訪れておらず、月間鑑賞数は僅か3作品のみでした。
15年来の親友(片思い中)である我がHOMEのTOHO-CINEMASに至っては、1月に鑑賞した邦画『さんかく窓の外側は夜』から約3ヶ月の間、足を運びませんでした。
私のTOHOマイページ鑑賞履歴をご開帳。
鑑賞履歴だけを見ると私のTOHO離れが克明に表れています。
2ヶ月間・・2週間だって間隔を開けたことがなかったTOHOでの映画鑑賞。
年間劇場鑑賞数・平均135本ほどを10年以上続けてきましたので、単純に週に3回はTOHOシネコンにいた計算。
顔馴染みの劇場スタッフにすれば生存確認が必要なくらい事件かもしれませんね。
コロナ渦で外国の映画が中々入ってこないという事もあり、このまま映画離れになるのかな?なんて思ったりもしましたが、
これも単純な性格なので、映画を観ただけで、やっぱり映画が好きだ!となり・・記事を書くモチベーションにも繋がるのです(笑)
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『ミナリ』
監督🎬【リー・アイザック・チョン】
父親【スティーブン・ユアン】
母親【ハン・イェリ】
長女【ネイル・ケイト・チョー】(新人)
長男【アラン・キム】(新人)
祖母【ユン・ヨジャン】
従業員【ウィル・パットン】
配給[ギャガ]
本編[1:55]
「いい映画だったよ」とこの記事を書きながら体が言葉を綴らせます。
正直、鑑賞中はそれほどでもなく、評価は中の中という感じでした。
しかし鑑賞から2週間が経ち書き始めたところ、作品を振り返り総括した語り口が「いい映画だったよ」で始めたいと成ったのです。
題名『ミナリ』。
聞きなれないMinariという英語。
「セリ」の韓国名を「ミナリ」と呼ぶそうです。
セリといえば、「春の七草」を連想します。
そして東北旅が好きな私の場合、秋田県の郷土料理であるキリタンポ鍋等、お鍋の具材に入っている緑黄色野菜というイメージが強く・・あぁ想像しただけでお腹がすいて来ました(笑)
(食いしん坊Σ(゚д゚lll))
ただ、
セリについてこれまで深く考えたことがなかったので、知識を入れるためにWikipediaでセリを調べたところ。日本原産の草ということを知りました。
劇中の感じから韓国野菜だと思って鑑賞していたから・・・なんだかとても嬉しい。
以下は。Wikipedia内の中から本映画と関連性がある情報を抜粋しました。
・ 数少ない日本原産の野菜のひとつ
・ 西洋では食べる習慣がない
・ 北半球一帯とオーストラリア大陸に広く分布
・ 土壌水分の多い場所に郡生
・ 春に苗を植え付け、秋に収穫
・ 冬の野菜
・ 水田栽培の呼び名は「田ゼリ」
あなた様にとってセリは見慣れたものでしょうか??
東京の下町生まれの私には、子供時代から「田んぼ」は勿論、「畑」自体を見たこと自体が殆どないので、それらは遠足や旅行といった行事事でしか見る機会がなかったです。
そのためセリを見て育った記憶がなく、劇中の中でも雑草としか認識せず、正直大人になった今でも「どれがセリだか」見分けがつきません(^_^;)育って来た環境なんだなぁ。
大人になってようやく、セリのクセや苦味を味わうようになりました。
セリの話やエピソードトークをここまで語るつもりはありませんでしたが、語り始めたら・・これ性分。
西洋には馴染みのないセリという香草。
韓国移民のお婆さんがアメリカの川に苗を植え付けます。
アメリカで生活する娘夫婦のもとに、韓国から移住して来た老婆が、近くの川に持参したセリの苗を植える、という導入。植え付けや手入れの様子や描写があまりにないのは・・残念な点。
一つ想像を働かせると。
旅人が、自生しているセリを見つけて「どうしてアメリカにセリが!?大発見だ!」とかにならないのかな(^_^;)
まぁ植えるのに許可はないだろうから、結構好き勝手、生態系を変えるのだろう。
いや、ちょ待てよ。
私の2つ目の想像ですが、おそらく近くて遠い国の韓国としては日本原産野菜という自国輸入を認めたくないだろうから、「セリは韓国が原産だ!」と事実をすり替える人もいるのでしょうね。
(現在は、キムチの発祥は韓国or中国か?と、両国が綱引きしてるらしい。)
日本原産という言葉は守りたいなぁ。
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まず初めに。今作品は本年度第93回アカデミー賞にノミネートを果たしております。
主要6部門では・・なんと作品賞・監督賞・主演男優賞・助演女優賞の計4部門でのノミネートという大快挙。
特に俳優部門は5人しかノミネート枠がありませんからね。名だたるハリウッドスターの中に韓国人が2名もいるなんて、個人的には驚きしかありません。それについて考える時間を設けました。
近年のアカデミー賞はデリケートで、打たれ強いのか打たれ弱いのか分からない。
白人が中心となれば差別だとなり、どんなにいい演技をしても大賞には選ばれない。
そんな年があれば、次の年には非白人を押す流れになり、だいたいその年は非白人(主に黒人)がノミネートや受賞をする傾向が強い。
今年も後者の流れになっています。大統領が交代したことも大きいかもしれませんね。
昨年の『パラサイト』は、素直に大絶賛できなくてねぇ(^_^;)これが天下のアカデミー賞の作品賞なの!?というモヤモヤが私の意識の纏を覆いました。
(自分の中で『万引き家族』の方が上だと思うから、外国語映画扱いではないことに納得出来なかったんだろうな)
昨年の記事です。
「前半はS」で「後半はB」と言った怒涛の展開で点数的には70点くらい。
それでもアカデミー賞の作品賞を受賞という歴史的大快挙を遂げたことは、本当に素晴らしいこと。
今作品は製作がアメリカでハリウッド映画という扱いになりますので、mAbの予想だと、助演助演賞を受賞する可能性が非常に高いと視ています。
(今年のオスカー助演女優賞部門は中堅と古豪の闘い)
正直、母国語でオスカーにノミネートして大賞を受賞するのなら、韓国としては理想的でしょう。
2年連続、大韓民国出身者がアカデミー賞のオスカー像を手にする画は・・永遠のライバルである日本人としては、先を越された感が強いし、予想しにくいのですが、
一度受賞すると免疫が出来ますから、今後も韓国がアカデミー賞常連国となるのは間違いないでしょう。
それでは程良く、この素敵な映画を語りたいと思います。
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時の大統領はロナルド・レーガン。
アメリカに移住し暮らす韓国移民の物語です。
1月期の深夜ドラマ『その女、ジルバ』の脚本にどハマりしました。
そこから太平洋戦争・戦前戦後の日系ブラジル移民を検索し、Wikipediaのページから各国に移住した日本移民の歴史をネットサーフィンして熟読したタイミングの鑑賞だったので、この映画への興味関心はのっけから強かったです。
主人公一家は人物(家族)構成がハッキリしているので、本編鑑賞中に「ここに至るまでの背景」が理解しやすいです。
対して、主人公一家(アジア人)以外の(白人の)相関説明は極端に弱いですね。エキストラ程度。
「家族以外」は外野のようにも感じるし、こういう箇所は「家族」に執着的に展開しすぎている感があります。いい意味で視点が集中していて、悪い意味で視野(執着しすぎて周囲を見渡さない)が狭くなって描かれる。
(韓国映画+アメリカだと、血縁者で一箇所に固まるような「ポツンと一軒家」に視えます)
私の解釈だけで書き進めていくので実際に思い描かれた「正解」とは異なるかもしれません。その点はご了承下さいm(._.)m
【イ】一家が、米国アーカーソー州の草原に移住するシーンから映画は始まります。
アーカーソー州って・・・どこ??
位置を確認いたしましょう。
アメリカの南部。やや東部よりです。
周囲にはテネシー州・ミシシッピ州・オクラホマ州・テキサス州・ルイジアナ州と南部でも有名な州が多く、南部色の強い土地柄なのかなと想像致します。
こうしてみると「海なし県」の話題で盛り上がる日本とは規模が違って「海なし州」が殆どなんですよね、大陸って。
主人・【ジェイコブ・イ】
夫人・【モニカ・イ】
二人の間に、長女【アン・イ】、長男【デビッド・イ】がいて、未就学児の幼いデビッドは心臓に持病を持っています。
(以下、first name名前表記)
先程の冒頭書きに
もう1設定、付け加えます。
アメリカに移住した「クリスチャン」の韓国移民の物語です。
日本は宗教に関してとてもデリケートな国なので、上の言葉1つでまた違った想像になると思います。
韓国人にクリスチャンが多いことは、恥ずかしながら昨年韓国の教会で新型コロナウイルスの大量クラスターが発生したニュースで初めて知った次第です。
この一家は他の韓国人移民とつるむ事を避けているので、アメリカ南部の白人(中心)教会に通っています。避ける理由は「色々あるのよ」とセリフにありましたが描写はありませんので、想像のみの解釈です。
そして過疎化的な脳内でお恥ずかしいのですけど・・
個人的に違和感なのが、イングリッシュネームなんですよね。
ジェイコブとかデビッドなどは白人の名前として脳が認識しているので、すんなりと名前が入ってこないんです。
(極東人の西洋進出・国際化の昨今に何を言ってるんだ!という話ですが。。)
極東人が祖国の名前を付けないのは私には違和感があるので、疑問を調べてみると、ネットに記事が挙げられていました。
納得のできたコラムを貼らせていただきます。
イングリッシュネームは欧米圏で暮らしていくには便利という理由もあるし、そもそもこの一家はクリスチャン。
詳しいことは知識不足なので膨らませるつもりはないですが、その都度勉強したいと思っております。
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引越し先に向かい一本道を走る車が一台。
アメリカ映画では非常によく見るオープニングです。
その車内の顔立ちが白人や黒人ではなく平たい顔の黄色人種というのは・・・アメリカ映画では、これ珍しい。
ちなみに韓国人の顔の特徴で検索したところ、韓国人はアジアの中で目が小さく、顔が平べったくエラが張っている、と説明されていました。参考にした記事のリンクを貼らせて頂きます。
草原に横長のトレーラーハウスが1台、停まっている。
今日からここが我が家だと、運転席から降りた大黒柱の父親が云う。
まだ踏み台のないトレーラーハウスの玄関。80cmは高さがある入り口に足をかけ飛び乗って、主人は家族に手を差し伸べる。
2人の子供たちは状況に臨機応変。両親がいれば何だって大丈夫。子供ってそういうものだと思う。
だけれど妻は不安げで動揺している。「なに、ここ?」「大丈夫なの?」
ジェイコブはこの田舎の地で畑を耕し、韓国野菜を作り、都市のコリアン商店に卸そうと農業開拓を夢見て移住を決めました。
都市には韓国移民は多いが、良質な韓国野菜が少ないことに、目を付けたわけです。
農業の素人である私が見ても、無謀な夢だと思いました。ここを開拓していくのは並大抵の努力では難しいと思いますし、何より、自分一人で開拓を行おうとしているからです。
ジェイコブの決意は固く、タンスの奥に貯めていたドルを使い、中古の耕運機を現地のアメリカ人から購入して行動していく。
だがいかんせん!資金がない。この最も定番な問題がネックとなり、このドラマに終止付き纏うのです。
男のジェイコブはいいです。夢がありますからね。
だけれど、妻は不安で心細い。2人の子供のことも第一に考えたい。
女性のタイプも様々で、こういう家族映画の際に「女」を強く出すか「母親」を強く出すかで分かれます。
妻のモニカは母親として存在感の方が強いです。前半終わりに韓国から母親が移住し同居しますが、それ以降は保護者的な感情表現が多くなる気がします。
夫が引越し先を決め、家族で移動。
「あなたの夢が私の夢」という女性ではなく、「あなたが決めたことに付いてきた」という感じの女性に思えます。
開拓は夫1人で行います。農耕民族なんだから夫婦で耕せばいいのに・・と思うのは昭和の考えかな。
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夫婦は韓国からの移民で、長男だけがアメリカで出生したと映画から知り得ます。
それを知ると韓国時代の生活映像(回想シーン)も劇中にあったらいいのになぁ・・と細かい描写にこだわる私は思ったりするのですが、アメリカで踏ん張る移民の話ですからね、過去の描写は必要ないのかも知れません。
また、アメリカで生まれた長男は韓国語と英語を話します。妻のモニカが若干英語に手間取っていますが日常会話は問題ない。これって移住先で生活する上でとても大きいですよね。
この映画の理解を高める上で、最も重要人物だと思うのが妻であり母親のモニカなので、彼女についてを特に注視して鑑賞しました。
夫婦喧嘩の言い合いから、妻のモニカは韓国時代の出身地はソウルだったと知ります。
「都会出身の君には分からない」と旦那が言います。
追い込まれた時に感情的にいう「君には分からない」という口喧嘩。言われた方は突き放されたみたいに感じてショックなんですよね(^_^;)
ただ、モニカは都会出身という雰囲気を出さないし、妻としても母親としても献身的に仕事もしている女性に視えます。何れにしても「夫婦喧嘩は犬も食わない」ので・・次に進みましょう。
(アカデミー賞の選考では最も好まれる要点の気がします。口喧嘩のシーンはね。)
慣れない土地+海外生活+友達がいないという環境に心細さを感じている。
そんなモニカの気持ちを読み解くのも、この映画を語る上で外せない点でしょう。
だからこそ子供たちの存在が救いになるわけですからね。
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長女のアンは年齢10歳くらいかな。公式サイトには記載がなく、プロフィールの情報から今年で12歳と知ります。
描写こそありませんが、この地に引っ越し、地元の一般学校に通っていると想定します。
(学校の描写がないのが残念!韓国人学校とか近くにあるのかな?都会だったらあるだろうけど。)
弟の面倒見が良く、母親や父親も「しっかり者」という信頼を寄せています。
そして何より英語を苦にしないのでコミニュケーション能力が高い。夫婦が移住した時期は長女が幼い頃でしょうから、物心ついた頃から英語がネイティブに身に付き、母国語の韓国語と二ヶ国語を喋れる。
対して、未就学児の長男は、良い意味で「手のかかる子」。しっかり者の姉、好奇心旺盛な弟。この性格の関係性がとてもいいです。
子供は天使と表現される。まさにそれ。
子役の2名は共にアメリカ在住で本作品が俳優デビュー作とのことです。
それを感じさせないのは、ハリウッド映画の人選眼なんでしょう。
また、「この両親の子供」と考えた時にしっくりくるので、きっと骨格的にも顔の作り的にも計算して選んだのでしょうね。
日本では両親役と子供役の顔立ちの系統が似ていない事が非常に多いので、懸念して来ましたし、それが私のハリウッド愛への方向を強く向かせた要素の1つです。
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農地を開拓し、タネを植え出荷する。それまでには歳月がかかり、農業経営に使うために貯めた資金は直ぐに底をつきます。
夫婦は同じ孵卵工場でヒヨコの鑑別(性分け)をする仕事をしていて、それが収入源です。
前に住んでいた土地でも同じ仕事をしていたそう。
ひよこの鑑別。完全手作業で、1羽1羽ヒヨコのお尻を覗いて性別を見分けます。
オスとメスを籠ごとに分けていくのです。
夫のジェイコブはその道のプロで、新しい職場でも即戦力。工場1のスピードと正確さを誇るTHE・職人。
妻のモニカはまだ不慣れの段階で、ヒヨコを家に持ち帰り勉強をしています。おうちピヨピヨ。
ここの説明も劇中にはありませんが、おそらく生活費のために自分も始めたんだと想像します。
主人のように上手く出来なくて・・と隣の韓国人パートに話していましたから。
このヒヨコ工場のシーンで印象に残ったのは冒頭。
この段階では子守がいないので、未就学児の長男デビッドを工場に連れて来ています。託児所はないのでフラフラしている感じ。
屋外に煙草休憩に出た父親に添う長男。
煙突からモクモク。「あの煙は何?」と指差して聞く。
父親ジェイコブは「あれはオスのヒヨコを殺処分しているんだ。オスは卵を産まないし、食べても美味しくないからね」と教える。
このシーンは結構私には衝撃的でした。
見方を変えれば、この工場でジェイコブやモニカは、瞬時に命の選択をしているわけ。
メスに生まれたら繁殖・食用となり、オスに生まれたら殺処分。成鳥になる前にヒナの段階で処分する。
こういう描写って日本の作品では描くことが少ないですね。
そういう日常的な免疫が日本で生まれ育った私にはないので衝撃的に感じるのです。
中韓の映画を見ると「命を頂くこと」の描写が残酷だったりしますが、アメリカ映画として考えるととても合っているワンシーンでした。
長くなりましたが、ここまでが映画開始20分で描かれる『ミナリ』です。
前半部分まで書こうと思いますが、こんなペースで書いていたら、読まれる方も嫌気が差すだろうと思います。
・・・頑張って読んでください。
(簡潔に書くとは宣言しないんかーいΣ(゚д゚lll))
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(シーンが変わると)韓国から渡米して来たモニカの母スンジャ。
(イングリッシュネームではないから、個人的にはしっくりきます。)
これは私の想像なんですけど、祖母はテレパシーみたいに娘のSOS(心細さ)を感じて、アメリカにやってきたのだと思います。
「お母さん、淋しいよ、助けてよ」という描写は一切ないため、夫婦喧嘩の言い合いの末の解決が、韓国から母親が移住してきたというシーン展開になります。
年老いた母親が、娘夫婦の家で暮らすというのは日本でもよくある事だと思いますが、外国への移住というのは非常に大きな決断だと私は思います。
祖母スンジャは70数年の間韓国で生きてきた女性なので、韓国に未練はないのかな?とも想像しましたが、それ以上に娘のことが心配で、終の住処となるアメリカに渡米したんでしょうね。
(時差ボケ等なかったのだろうか?)
お年寄りは腹の括り方が違うと思います。
スンジャがトレーラーハウスに到着し、子供に「今日から一緒に暮らすのよ」と。
母親の顔を見て心から安堵するモニカ。見た感じ義母とは当たり障りのない関係性のジェイコブ。
続いて孫と御対面。アンには「大きくなったね」。デビッドとは「初めまして」。初対面は近寄らない。
スンジャが住むことになると、日中は子供達の子守を彼女に任せ、夫婦は其々仕事に出れるようになりました。
これによりジェイコブは畑仕事に没入する時間が増えたり、ヒヨコ工場にも連れていくこともなくなったので、映画の展開が2者方向と可動域が広がり(映画が観やすく)スムーズになっていきます。
だけど自分が思い描いた「お祖母ちゃん像」ではないのが意外です。
祖母スンジャは家事や料理が出来ず、勉強もろくに出来ない、趣味は花札。
趣味が「花札」ということで東京の下町育ちの私にとっては、子供の頃に祖父母がしていた記憶があるので懐かしいけれど、この時代の女性で家庭の仕事が出来ないと宣言している人は珍しくて意外。
そのくせ韓国から韓国食材や苗を沢山持って来るので、だったら料理は出来るんじゃないのかな?なんて思ってしまったり(^_^;)
兎に角、登場から暫くの間の祖母スンジャは、口が汚く、梅干し口のお婆さん、という印象が強かったです。
(中盤以降は明らかに表情が柔らかくなるので印象が変わります)
前半のハリケーン注意報の夜の夫婦喧嘩で、先ほども書きましたが、妻が「都会出身」とネタにしていましたけど、つまりモニカの実家はソウルという事でしょ。ソウルと言ってもピンからキリまであるだろうけど、都会の括り。このお祖母さんと都会ってどうも結びつかないんですよね(^_^;)教会の募金を盗んだりしてるし。
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4人家族が5人家族となり、
両親はヒヨコ工場で働き、それが収入源。
父親は工場仕事の傍らで、本業にしたい農園の開拓に精を出す。
イ農園には従業員が1人。中古の耕運機を売ったカトリック教徒のアメリカ人に雇用を懇願され、以降は2人で行います。
そのアメリカ人ポールは、十字架を背中に背負いながら歩く、地元でも有名な変人でしたが、農業の知識は深く、文句も言わないので功労的に役立っています。
2人の子供は穏やかで優しい性格です。
長男のデビッドは心臓に持病を持っていて、母親や祖母の心配の様子はスクリーン越しから伝わってくるほどでした。
そのデビッドと祖母スンジャは、初対面だったからか子供の喧嘩みたいに因縁の相手でしたが、一悶着を経て「最愛の孫・祖母」の関係性になってからは、美しい家族愛だなと思いながら観ることができます。
(おばぁちゃん。って感じですよね(^ ^)とても自然でした。)
映画の物語紹介は一先ず書き終わりましたので、最後にいくつか総括した視点を書いて記事を締めたいと思います。
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映画を観ていく途中で、観客は先の展開を予想する、こう来たらこうなるだろうと。
その描写が描ききれていなかった為、仕方がなく、こうなったんだろうと、自分なりに納得させて消化不良を感じないようにした。
アメリカ合衆国は移民大国ですが、移民にとっては、祖国があるぶん居心地だったり肩身の狭い想いは必ず経験があると思います。
なかでも「南部=白人社会」の地域で生活する物語なので、「アジア人への人種差別」という描写は必ず描かれると予想しましたが、この点は拍子抜けしました。
この映画の白人たちは、いい意味で無関心で、色物を見ている感じはしますけど、だからと言って仲間はずれにはしないんですよね。
白人の教会のミサにアジア人一家が1組混ざっていると、変な例えになるけれど「みにくいアヒルの子」みたいに指や目線を指すと私は考えるのだけど、崇める者(イエス・キリスト)が同じということで、フレンドリーさがありました。
のちに友人となる白人の男の子が、デビッドに「君はおかしい。どうして顔が平たいの?」と真剣に聞いたシーンは、日本人の私にとっても心当たりがありますからグサッ!と突き刺さりました。この台詞を素直な子供に言わせるのがいいですね。悪気がないので。
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日本だと、ワイワイガヤガヤ、「貧乏だけど笑顔が絶えない家庭」という家族ドラマが理想的ですが、
この家族は家族4人ともそこまで笑顔がなく、妻も「フッ」と笑うタイプだし、賑やかな性格ではありません。
だからこそお婆ちゃんという明るさがカンフル剤になっているように感じます。
欧米人は表情豊かなので、アジア人の表情は何を考えてるか分からないなんてよく聞きますけど、
それを象徴している映画のカットがこれで
笑顔の少ない家族だけど、幸せの感じ方は心の中を覗かないと分かりませんからね。
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次の記事で書く予定のロードムービー『ノマドランド』も同じなんですけれど、水の滴る様子だったり風景や鳥の飛翔など、生きとし生けるものの様子を、展開(日付)の切り替えの際にワンショットで差し込んでいます。都会の映画だとない描写ですね。
味気のない見方ですけど、なんというか・・こういう固定カメラで映す風景のカメラワークは(賞レースを意識した)流行りなのかな?と思って観てしまいました。
(26日のアカデミー賞。『ノマドランド』は作品賞最有力と予想しますが、自分的には「面白い作品」ではなかったです。)
(※『ノマドランド』はアカデミー賞の式後に記事にする予定です。)
主演のジェイコブを演じた【スティーブン・ユァン】[37]は、海外ドラマ『ウォーキング・デット』シリーズのメインキャストのグレン役として人気を博した韓国人。
映画鑑賞中心の私も、上記の作品は殆どネット鑑賞してきたので、ドラマ出身の俳優を映画で観る機会は少ないので嬉しかったです。
個人的には「何故?」ですが、スティーブン・ユァンは主演男優賞にノミネートしています。
今年の主演男優賞は、先日癌のため43歳という若さで亡くなった【チャドウィック・ボーズマン】が受賞になると思いますが、ハリウッドの花形であるアクションも出来て、今作でドラマ演技も評価を得たので、アジアを代表するハリウッド俳優になるのかしら。
妻・母親モニカを演じた【ハン・イェリ】[36]も韓国では中堅の大女優だそうです。公式サイトには10回以上の受賞に輝いていると記されています。たいしたもんだ。
こちらの女優さんも初見で、私には【スティーブン・ユァン】だけが「観た顔」。まぁでもその方が、なんの先入観も持たないので、映画のみを視るには好条件だと思います。
ハン・イェリさんは・・じっくり観察しましたけど、表現力よりも演技力の方が全面で出るタイプの女優さんですね。
お顔立ちが私には【綾瀬はるか】さんと【安藤サクラ】さんを足して2で割った感じに観えて、
遠目からだと、綾瀬はるかさんのモノマネをされる【沙羅】さんに似ていると思います。綾瀬はるかさんをギュッとした感じ。
ウィキペディアやGoogle画像では、今作品のモニカとは雰囲気も変わり、可愛らしいルックスでびっくりしました。
目が細くて鼻が丸い、先ほどリンクを貼らせていただいた記事に書かれていた韓国人の特徴がマッチする。
そして忘れてはいけません。
祖母役を演じた女優【ユン・ヨジュン】[73]は韓国では大女優という地位ということなので、韓国映画やドラマが好きな方には、初見の私を「どうして知らないの?」と思われるでしょう。
この年代の女優さんって熟成されていますし、日本でも同等かそれ以上の演技力がある方が数名思い浮かびます。
(こういう役柄を演じさせた時に私が思い浮かべる女優は、桃井かおりさんと、故・樹木希林さん。)
初登場は「教養のない粋なお婆さん」という印象ですが、「孫命のお祖母さん」という中盤、展開にキッカケを与える後半。演技や表情も3パターンはあり使い分けていますので、冒頭にも書きましたが、私の予想では助演女優賞の筆頭です。
韓中の映画やドラマは殆どと言って観ていないので、記事で語ろうとすると、知識力の無さが露呈してしまいますね・・もう少し観てみようかな。(ちなみに最近、Netflixに加入したので『愛の不時着』だけを観ています。北朝鮮の物語、興味深い。)
最後に。本当に最後に。
恒例となっている劇後にスマホのメモアプリに箇条書きした映画の寸評のコピペです。
今も当時も書き手は私自身なので、同じチョイスをしている箇所もあると思います。
>
韓国映画の最大の特徴は良い意味でも悪い意味でも怒涛だと私は思っていて、昨年のオスカー然り、展開がハマるハリウッド映画は韓国の作風と合っているのだと解釈した。日本は展開よりも脚本重視の国だから作風自体が違う。
今作は2年連続で韓国系が米国のオスカーを狙うわけだけど、開拓移民+韓国のわりに思ったほど「泥臭くない」し、部分部分の出来事を丁寧に描いている、言ってしまえばそれだけ。
男優はデッドで馴染み。女優は綾瀬はるか似。お婆ちゃんはタイトルのミナリ(セリ)から幸運を呼んでくる存在なんだろうと想像。あれだけハッキリ喋り、目の中に入れてもいたくない孫を「死なせない」と抱きしめて眠った翌朝に、脳卒中。親が子供に対して身代わりになりたいと祈る体現を感じた。ここの「奇跡」の説明を描き切ることが出来たら、もう少し得点が上がるけど、中途半端で残念。
また、この映画の最大の設定が宗教、カトリックで、宗教にデリケートな日本ではこういう設定をまず描かない。韓国は大陸だし、鎖国化の日本よりも早くキリスト教が拡がったのかな?と想像するし、正直昨年のコロナで韓国の教会の存在をWikipedia先生で検索し、色々知識を覚えた次第。カトリック・移民=アメリカ映画の世界観に馴染むのは必然なのかなとも思った。ところでワンシーンに注目。心臓に持病を持つ長男のタンクトップの絵が、おそらく日の丸で、ジャポニカな服だと思います。韓国は『鬼滅の刃』を始め、近年日章旗とか度々文句を付けてくるから気になりました。
現地のアメリカ人(白人)に「どうして平たい顔なんだ?」と聞かれていたけれど、日本人も同じように見えるはずから区別なんてしていないんだろうな。細かい点を気にしなければ(それが一番難しんだけど)非常にいい映画です。
韓国系の演者の演技は「キレ」と「泥臭さ」の2つが際立って表れると私は思っています。
演技(の感情表現)も熱演となるので、リアクションの大きいアメリカ向き。
それを踏まえると、子役の男の子も含め、父親(男性陣)の演技は、上手は上手だけれど以前にも味わったことのある・観たことのある想定内の演技に視え、加点はないです。
孫・娘・母親、
3世代を演じた女優陣の演技を高く評価したいです。
そしてこの記事を書いていて、何というか、心地がよく穏やかな気分で描けたことを伝えたいなと思います。
脚本 13点
演技 16点
構成 14点
展開 13点
完成度14点
[70]点
今回も長くなりましたが、最後までお読み頂きまして有り難うございます。
【mAb】