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映画評論『Detroit』

 

 

Detroit

 

『デトロイト』

 

本年度劇場鑑賞作品vol.9

 

 

 

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監督🎬【キャスリン・ビグロー】

 

 

【ジョン・ボイエガ】

 

【ウィル・ポールター】

 

【アルジー・スミス】

 

【ジェイコブ・ラティモア】

 

 

 

配給会社〔ロングライド〕

 

 

 

この映画で描かれる事件を、鑑賞前は詳しくは知りませんでしたが、アメリカでは大変有名な事件のようです。

 

 

アメリカ国内で起きた事件を、私はどれくらい知っているんだろう?

 

あなたはどれだけ知っていますか?

 

 

このジャンルを語る際に、毎回のように書いていますが、アメリカ映画は自国の事件を世界中の誰もが知っているテイで描くので、そこのところは未だに慣れません。

 

 

白人による黒人差別に、映画を通して大変興味を持っているので、本やネットから知った事件であります。

 

 

「知ること」にはなったけれど、振り返ることにはならなかったかな。

 

 

映画を語る者としては、ある程度は歴史に詳しく造詣が深くないといけないと思っているんですけどねm(_ _)m

 

 

__

 

 

 

オープニングのテロップでは、アメリカに移民してきた黒人の流れと、それに対する白人による差別の紹介がされている。

 

 

こんな一映画の、短すぎるテロップで語れるほど、簡単ではない話ではあるけれど

 

時代背景と都市と問題提起する点は掴めるから納得する、さぁ映画の始まりだ。

 

 

 

1967年。アメリカ合衆国中西部・ミシガン州にある世界都市デトロイト。

 

 

 

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時刻は夜時。デトロイト市警が1つの建物の中に強行突入するシーンから始まります。

 

 

アフリカ系退役軍人のパーティー。罪状は違法酒場の摘発とのこと。

 

 

この事件の発端となる出来事ですが、何も知らずに映画の突入シーンだけを見ると、明らかに白人に非がある逮捕劇のように受け取る描き方をしています。

 

 

無理矢理に理由をつけた理不尽な逮捕だと思いますが、先ほど書きましたように、その以前の歴史を説明していない状態なので、今回もアメリカファーストの映画ではあります。

 

 

数多くの映画から、人種差別は基本的に南部で起きているのだと、イメージとして思い込んでいたので、北米の差別は意外にも感じたし、衝撃的な立ち上がりでした。

 

 

黒人に対する差別が強く残るこの街で、特にデトロイト市警に対する黒人差別は日に日に激しくなり、特徴は暴力的な威圧です。

 

 

市民を守るはずの警察が、黒人の市民を暴力的に扱っているんですから、とんでもない国の状態だと思います。

 

 

まるで奴隷時代の扱いのよう。違うのは人権があることで生活感が見えるくらい。それがあるから、それがあるぶんアメリカの短い歴史の中に、これだけの緊張感を持てる結果になっているのでしょう。

 

 

一部の市警にとってみれば「黒人に対しては何をしてもいい」という感覚なのでは?と映画を通して思ってしまうほどです。

 

 

冒頭の逮捕。

この不当逮捕を目の当たりにした地元の黒人たち。誰かがパトカーに石を投げたことをキッカケに、暴動化します。

 

 

まさに賽は投げられたという感じです。プッツンとなった。

 

 

その日を境に全米5位という世界都市デトロイトの街は機能を失います。

 

 

食料品の強奪、市民は黒人の店も白人の店も関係なく強盗に入り、常に何かが燃えていて煙が上がり、炎が立つ光景。世界都市のスラム化・治安最悪。

 

 

これに対し、私の見解ではここが肝心。アメリカは「やられたらやり返す国」です。倍返しです。

 

 

市警やミシガン州軍は暴徒化し武装する市民を攻撃します。

 

 

わかりやすい内戦です。

 

 

この冒頭で一番衝撃的だったのが、子供を撃つシーンです。

 

 

日中に軍がパトロール行進をし、戦車も走っている。

 

 

こうした場所で暮らす人々のアルアルで、「窓際には近づくな」という鉄則は教えられていたのでしょけど、マンションの一室で、気になり外の様子をチラッと見ようとした黒人少女を、軍が「敵」と判断し躊躇なく爆弾を打ち込むシーンがあります。

 

 

悲しい子供の死ですけれど、これが敵の武装市民の場合もあるでしょうから、本当に一瞬の判断が命取りになるシーン。

 

 

___

 

 

 

この映画の上映時間は2時間20分ほどありますけど、冒頭・前半・中盤・後半と、4つのシチュエーションに分けられて各変化をつけているのが特徴的です。

 

 

冒頭に発端。

 

前半に人物紹介。

 

中盤に事件。

 

後半に、事件、その後の裁判。

 

 

4つの映画として分けても考えられる。分けても考えられる・・ということは〔まとまりがない〕というマイナスの見方もできます。

 

 

全体を通しての展開は後半の消化不慮感があったので平均点の点数になりますけど、上に書いた前半の入り口や中盤のシーンにおいてはS級でした。

 

 

とにかく中盤のすごい。とてもすごい

これまで私が観たきた映画の中でも、パニック感・「どうしようもない感」は群を抜いているかもしれないです。

 

 

 

メインの登場人物3名を紹介します。各キャラクターは主役となります。

 

 

黒人のメインは2名。

 

 

『スターウォーズ』や『ザ・サークル』にも出演していた今一番勢いのある黒人俳優と言って間違いないでしょう【ジョン・ボイエガ】〔25〕。

 

 

ボイエガが演じる青年は、母親と2人で暮らし、昼は工場で働き、夜は食料店の警護をしています。中盤から終盤にかけての出番が多くなり、客観的に俯瞰的に「この出来事」を観客に伝える役所です。

 

 

 

もう一人は、地元の黒人グループのメインボーカルを務める歌手。主に70年代に活躍した米ソウルR&Bボーカルグループ【ザ・ドラマティックス】の初期メンバー。

 

 

彼らが映画で登場するのは、音楽事務所の人間が見にきているショーです。地元の歌手たちが次々に登壇し歌を披露する。日本でいうスター誕生オーディションでしょうか。

 

 

前のグループのおかげで会場のボルテージは上昇。ドラマティックスに順番が来て、メジャーデビューを賭けてステージに上がります。しかし暴動が起きステージは中止に。歌わせてくれよ!と途方に暮れるメインボーカル。その帰りのバス。

 

 

 

暴徒化した街は異様な雰囲気に包まれています。市民は黒人・白人関係なしに襲いかかっています。走っている車に石を投げたりします。めっちゃヤバイ。

 

 

市民の目がバスに照準を絞る。石を投げて、乗り込んでくる。慌ててバスから降りる乗客たち。

 

 

ドラマティックスのメンバーはこの日はこの場で解散し、分散する。

 

 

そのうち2人。主人公とマネージャーの幼馴染同士が、この日はモーテルに宿泊します。男二人の宿泊、気にはなりましたが、ゲイと言うわけではない様子。

 

 

この俳優の演技、特に初見の俳優【アルジー・スミス】演じるラリーは素晴らしかったです。

 

 

特に印象に残りました。

確かすぎる実力と将来性がある歌手志望の青年なのに、悲劇の事件に巻き込まれ命の危険に瀕し、「殺さないでください」と警官に命乞いをする。

 

 

市民が警官に命乞いするのですからね、この映画は。

 

 

彼の存在感やキャラクターにより、私たち観客は、この白人警官に対して敵視感が生じることになるでしょう。黒人の方って、年齢不詳の感じもありますが、幼さの残る顔立ちと純粋な心が俳優を通して感じるので、私の中ではラリーが一番ですね。

 

 

そして白人警官。この映画の嫌われ役となる白人フィリップです。

 

 

デトロイト市警の中でも、のっけから感情的な性格でレイシスト(差別主義者)と分かる警官は、無抵抗な黒人に殴る蹴るの暴力を行うだけではなく、タブーとされている拳銃の発砲まで行うヤバイ奴。

 

 

警察官の暴力的な行動がスルーされるので、どこまでが許されるのか?も正確には分かりませんけど、さすがに拳銃はまずいらしく、上司に問い詰められています。「撃ったのはお前か?」「いや・・よく覚えていません」。

 

 

このフィリップ、感情的ですが頭も切れるようで、尋問の際にはお決まりのパターンを持つ。別室で容疑者を殺害するフリをして、ほかの者たちに自白させようとする。見た目が若者に見えますけど部下が2人。警察の上下関係がありました。

 

 

英国俳優【ポール・ウォルター】〔25〕はこの役を完璧に演じているように視えます。と言うことで私は感情移入をし、この俳優のことが嫌いになりました。

この役のイメージが今後も付いてしまう。

 

 

___

 

 

 

黒人による暴動が起きた冒頭。白人による鉄拳制裁。人物紹介の前半。

 

 

そして中盤。前半に登場した主要登場人物たちが一同に集結します。

 

 

その舞台が「アルジェ・モーテル」という宿泊施設。

 

 

映画で見る感じですと大学の寮みたいな感じです。何棟か建物があって、敷地も広い、そして大きさとしては小さめですがプールもあるので、若者の交流の場にもなる。宿泊客は基本的には黒人ですけど、白人も利用します。

 

 

私の頭の中にある「モーテル」というイメージではなかったので、この場所が戦場化することになるのも衝撃的でした。

 

 

白人の若い女性が宿泊者(登場人物)にいるので、黒人の一人がディスカッションするという流れが作られます。俺たちは常に恐怖と戦っている。無言で頷く黒人たち。

 

 

自分たちが受けて来た迫害や差別の話を、本音を、あまり口に出して喋らないのがアメリカ移民の黒人映画の特徴ではないでしょうか。実際の事件ですが、この白人女性は、本音を喋る機会を用意するためのキャラクターにも思えます。

 

 

1人の男が、ロングステイの年長者の男が、おもちゃのピストルで威嚇発砲をします。周囲の者たちは止めます。この映画の冒頭のように何かの糸がプッツンと切れたかのように行動に起こします。

 

 

静かな町の夜に1発の銃声音。

 

外で見回っていた警官たちは一斉に警戒態勢。そして本気を見せ銃声の音の先を特定します。テメェーこの野郎!!という怒りです。

 

 

先陣を切ってモーテルに突入する警官は、冒頭から感情的だったフィリップです。

 

 

フィリップは逃げようとして階段を降りて来た黒人(正確にはおもちゃのピストルを発砲した人物)を躊躇なく銃殺。居間には遺体が。

 

 

そして宿泊客全てを並ばせ問い詰めます。「銃はどこだ!?」

 

 

・・・銃はありません。だけど見ていた者たちも本当のことは言いません。

 

見ていなかった者たちは、何のことだか分からずに、問い詰められています。

 

 

銃はどこだ?

 

 

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銃はどこだ?

 

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毎回、思うのですが、黒人の方はどういう気持ちで、こうした演技をなさっているのでしょうか。よく「兄弟」と表現しますけど、プライドはズタズタに切り裂かれていると思うので。

 

 

 

残念で仕方がないのが、この映画の中盤以降から映画の幕引きまでの映画の描き方・進行の仕方です。

 

 

とにかく中盤のモーテルでの尋問シーンが「引くに引けない警官」と、どうしようもない状態が本当に緊迫した空気を作っていて、私の意識は完全に映画の中にありました。

 

 

どうしようもない。そのどうしようもない状況の迫力が鬼気迫っている。

 

 

中盤の出来事を映像で説明してからの後半の裁判は見所の1つとなります。

 

 

先ほどまで目で見ていた映画の出来事を、裁判で争うんですから斬新。

観客としては黒人の味方。法廷の場で嘘をつく様子を、どう見ればいい?

 

 

白人警官の中にも、一部が差別主義者なだけで、違う警官もいると紹介されているから、心が救われる気分にもなる。そして差別は良くない!と運動する国民。

 

 

しかしこの後半以降、中盤の長尺が嘘のように、省略的に描かれ、緊迫した気分から現実に戻される結果になった。

 

 

映画終了後の気分を伝えると、高得点は間違いないけれど今までと同じく素晴らしい黒人差別映画であるとなり、ダントツにはならなかったわけです。

 

 

 

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脚本 14点

演技 17点

構成 14点

展開 14点

完成度14点

 

 

〔73〕点

 

 

 

 

来月4日に行われるアカデミー賞授与式が書かれたWikipediaを載させて頂きます。

 

 

第90回アカデミー賞

 
 
 
続いて、今作『デトロイト』は、そのアカデミー賞に1部門もノミネートされない結果となりました。
 
 
日本のチラシにはこの時期(12月〜2月公開の新作洋画)恒例の「アカデミー賞最有力」と大きく宣伝されての公開でしたし、そうした作品が1部門も選出されないのは前代未聞ではないでしょうか。
 
 
個人的には、最優秀作品賞は難しいかなと鑑賞後に予想しましたけれど、多くの部門でノミネートはすると思っていました。黒人差別映画、俳優組合や、アカデミー会員による差別問題。人種差別のデモ。また一波乱起きそうですね。いいカードが出るか?悪いカードが出るか?トランプの配り方を傍観ながら観ていきたいです。
 
 
 
こちらが書かれた記事もリンクさせて頂きます。
 
 
 
 
 
最後に今作の公式サイトを貼らせて頂きます。
 
 
 
 
 
 
記憶に残る映画でした。是非ともご鑑賞のオススメ作品にさせて頂きます。
 
 
 
 
 
 
【mAb】
 
 
 

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