1記事ごとの間隔が空いてしまったこと、読者の方には大変申し訳なく思います。
続きを書きます。
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監督🎬
【井口昇】
主演
【伊藤健太郎】【玉城ティナ】【秋田汐梨】【飯豊まりえ】他
本編上映時間〔127〕分
物語)
山々に囲まれた閉塞感に満ちた地方都市。中学2年生の春日高男は、ボードレールの詩集『惡の華』を心の拠り所に、息苦しい毎日をなんとかやり過ごしていた。ある放課後、春日は教室で憧れのクラスメイト・佐伯奈々子の体操着を見つける。衝動のままに春日は体操着を掴み、その場から逃げ出してしまう。その一部始終を目撃したクラスの問題児・仲村佐和は、そのことを秘密にする代わりに、春日にある契約を持ちかける。こうして仲村と春日の悪夢のような主従関係が始まった。(チラシより)
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予告を観て鑑賞を決めました。
予告から受けた印象は、ゴスロリ系のドSのハーフ少女が思春期の男子高生の(奇行)性癖を目撃し、それを弱みに自分のシモベにする青春映画なんだろうと予想。視てビックリ。アングラーな泥臭い演劇集団の舞台を観ているみたいでした。
原作の漫画は読んだことがないので純粋に作品のみを観れましたが、正直言って「二度はないな」が感想です。悪い理由ではないです。単純に女優のキーキー声に耳がキーンとしたので、体力が奪われた鑑賞後の帰宅道(⌒-⌒; )
物語を振り返りながら、少々見解いたします。
ボードレールの詩集『惡の華』に没入した思春期の男子高生カスガ君。
この詩集は私自身読んだことがありませんので映画の内容から推察するしかないですが、勝手なイメージで太宰治にハマった学生みたいな感じなのかな?比較対象の知識が少なくて申し訳ありません。
彼が片思いしているのがクラス・・いや学園のマドンナであるサエキさん。
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こんな子、田舎の学校にいたら、町おこしになるレベルです。
(ということはご両親の顔立ちも良いはず)
ある日の放課後。出来心でサエキさんの体操着の匂いを嗅いでいたカスガくんは、その最中に物音がしたことで慌てふためき体育着を持ち帰ってしまいます。
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翌日学校に行ったら大騒ぎ。クラスの人気者の体操着が盗まれた!!
カスガ君の精神状態はアパーです。(春日違いΣ(・□・;))
その日の下校時。舞台は土手沿い。通学自転車で帰宅するカスガ君は、クラスでも暗くて何を考えているか分からない仲村さんに待ち構えられていて「体操着盗んだでしょ、黙っている条件として私と主従関係になりなさい。」と、このような流れで契約を結ぶ。
ニタニタ笑って、口角を上げながら「カースーガクン」(○○ちゃん、遊びましょ)の定番リズムの呼び止め。この点は子供らしさを見せる演出かな?
弱みを握られたその日から、仲村さんの奴隷になったカスガ君。「どうしてここまでされるんだよー!」と嘆くほど、仲村さんの
執拗な「イジメに近い要求」が続きます。だけど主導権は仲村さんですから最終的にはカスガ君は実行します。
そんな中でホッコリするシーン。
片思い中のマドンナ佐伯さんとのデートの約束を取り付けることに成功すると、当日は仲村さんの指示により、盗んだ体操着を中に着てデートを行います。
なんとなく壇蜜さんと板尾創路さんのR18映画『私の奴隷になりなさい』のプレイ演出に思い浮かべました(笑)
仲村さんは尾行しながらそれを見て喜んでいるのですが、
彼女にとって予想外だったのが、カスガくんがデート中に告白し、そしてOKを貰えたこと。
結果は佐伯さんからOKの返事が!?
このシーンを観ていて、なんだかすごくキュンとした自分がいました。青春っていいなって( ◠‿◠ )
しかし次の瞬間、告白成功を物陰で見ていた仲村さんが鬼の形相で近づいてきて、暴れに暴れて取り乱して、体操着の存在をバラそうとする。幸せムードが一変。必死に隠すカスガくん。佐伯さんキョトン。仲村さんテメェこのヤロー!
なんでそんなことをするんだ!mAbの気分も返してくれΣ(・□・;)
その後、それまでクラスで孤立していた筈の仲村さんが、カスガの彼女佐伯さんに接触し友達になると、しばらく三角関係のような奇妙な形を描きますが、彼女が出来リア充となり「普通」の学園生活を送るようになっていくカスガ君が気に入らない。
彼(同類)の「惡の華」を解放することに全力をかける仲村さんの情緒は、ここから急激な上下動を繰り返します。
視ているこちらとしましては、熱演する若い役者の演技と、字数の多いセリフを熱弁している様子を同時に視るのが忙しく感じましたね。5分おきに役者の見せ場がある構成なので、これ(ぶつかり合い)を作品の持ち味にしているのかもしれませんが、まったりする時間も必要だったのでは?と思います。
惡の親友・仲村さん。初めての彼女・佐伯さん。
前半の中学生編ではカスガを起点に2人のヒロインが登場します。
後半の高校生編になると芸歴の長い【飯豊まりえ】さんが「3人目の女」として映画に登場します。飯豊さんは私のいう「まったり感」の役割を担っていますが、ベテラン感もあるので映画の雰囲気が変わった印象を受けます。もう少し透明感のある女優の方が良かったかな。女子大生ならしっくりきますが、女子高生にしては落ち着いた雰囲気です。
主人公は中学生編で「色々」な経験をしますし、大人に迷惑をかけ、親も子の責任を負い、主要登場人物の人生航路は変わります。
これが高校生編になると、精神的にも成長し考え方も落ち着いていきますので、そうした変化も映画から感じ取ることが出来ました。
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では少しだけ寸評的なものを書きます。
ヒロインはとにかく取っ付きにくい性格で、主人公に話しかけるまでクラスに友達が一人もいません。
そして現実的に見ても手に負えない暴力性が・・厄介です。
この表現が果たして適しているのか分かりませんが、私には彼女は「癇癪持ち」に思えました。
こう感じさせたのは、女優の演技気質なのか、役柄のイメージなのか、私には前者の気がします。
ヒロインの仲村さん。漫画原作とはいえ、無理やりすぎる映像キャラクター。
このキャラ設定にするなら、精神病院などを描いた作品なら映画として成立(大成)すると思います。
代表的な成功例は『17歳のカルテ』のアンジェリーナ・ジョリーが演じた役柄リサかな。
仲村さんという役柄は台本的には成立していると思いますが、如何せん、演じる女優のレベルが低い。だから「こんな子いないよ」という矛盾した気持ちが生まれて、鑑賞中はその気持ちが邪魔をする。
クラス内では常に「ぼっち」で口数も少なく、テストの答案も書かず担任が嘆いてる。しかし「一匹狼の不良」というわけではないし、世の中に反抗しているわけでもない。彼女に対して誰も話しかけないので、おそらく「気味が悪いクラスメイト」という立ち位置だと思います。例えば、現実的に学校に一人は、デスノートとか書いてる人がいますよね。そんな感じ(^◇^;)
(後ろの席の真ん中という席順は、クラスで目立つタイプが座るイメージなのでヤメていただきたい。こういうタイプの子は廊下側の前から三番目くらいが理想。)
そして私にとってはここが一番違和感かな。ここは「映画だから」「芸能人だから」という理由で問い詰めてはならないところでしょうけど・・仲村さんは、どう見ても「外国」の血が入っているハーフ(もしくはクオーター)の女子高生。現実だったらモテるでしょ。
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普通にこの容姿を見れば、女子は「どこのジャンプー使っているの?」と聞きたくなるようなサラサラへアーじゃないですか?(^◇^;)クラスで目立たない子の設定だったら、こんなサラサラヘアーの白人系ハーフモデルタイプにしないほうが利口です。
仲村さんは父子家庭で田舎街の寂れた地域のトタン屋根のバラックに住んでいますが、映画の舞台は北関東の山に囲まれた地域です。
東京だったらまだしも、北関東にこんな「華奢で人形(蝋人形)みたいなハーフ女子高生」がいたら東京の芸能事務所にまで噂が回ってきます。なので映画とはいえ無理あるな・・と。
純日本人の設定でしたが、両親のどちらかを外国人にして欲しいです。
ちなみに仲村役を演じた【玉城ティナ】さんは沖縄出身で、父親がアメリカ人だそうです。
(東南アジア系のハーフは父親が日本人。欧米系のハーフは母親が日本人というケースが多いですね)
あくまで映画にリアルを求めたい自分の目線で視ているので、日本人設定だとしても、北関東の設定だと違和感しかないなぁ。。
これが栃木県という舞台設定ではなく、横須賀とか横浜(の田舎の地域)にすれば、違和感はないでしょうけど。。
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かつては漫画愛読家で、当時の映画評論では実写化になった愛読書も書いていましたから多少は想像できますが、おそらく字画数の多い作品なのでしょうね。セリフの羅列・文量が半端じゃなかったです。なんだか長セリフでは哲学みたいなことを言っていますが、言葉自体はあまり入って来ません。
セリフの感情表現は基本的に何かに踠いているキレ芸です。思春期ドラマなのでワメキが多い。
しかしそれを実写化した場合に漫画と同じセリフ量にしてしまうと、よほど演技力がある俳優でない以上は、一定のリズムになってしまうので、初見の観客は引いてしまうのではないか?が私自身の今映画の体験。原作漫画を読んでたよ!という人の見方は分かりません。あくまで1つの映画としてまっさらな状態で鑑賞しました。
特にヒロインの玉城ティナさんには、セリフの言い回しに抑揚がないので、ずっと同じリズムでヒステリックに喚いているだけで、五月蝿く聞こえてしまいます。これだけ甲高い声で喚いたら、癇癪ぽいし、映画内でも浮くし、見ていても引く。なんだか女優として悪いところばかり視える作品なので損していますし、そもそも男性と女性とでは声質が違うのだから、女性のヒステリックな声は聞こえのいいものではないと思います。という、ダメ出しです。
玉城さんの出演作は結構観てきました。TOHO系のシネコンで公開される作品が多いのが理由です。
『貞子vs伽倻子』の時はいい死に方をしていたんだけどな・・演技に「肝心な軸」がないというか・・リンゴで例えると(肝心な)芯がないけど、周りが甘いので許される感じかな。種無し果物。
熱演しているけれど、必ずしも、それが好演に繋がるとは限りません。
明らかに頑張っているんだけど・・拍手したい気持ちはあるんだけど・・熱演なんだけど・・うまかった!と本心では言えないな。
これは数多くの日本映画で何度も書いていますが、笑いの演技・笑い声を出す演技、これが日本人の声帯的気質なのか、人種的気質なのか、上手な俳優がほとんどいない。
今回なんて典型的なダメ演技で、笑い声が喉に詰まってしまっています。カスガに自分の本当を曝け出せと言う前に、仲村自身が無理しているように視えるので、厳しく書きますが配役ミスでしょうか。
学生レベルの「下ネタ」や、男子を蹴り飛ばすなどのアクションの連発なので、世間に俳優の今後の印象がついてしまうから演じ手にも事務所的にも覚悟を決める作品になると思いますが、今回の役柄はそこまで難しいとは思いませんし、女優次第では最高評価になる可能性がある内容だと思うので、もう少し女優の演技レベルを見極めて選出して欲しかったです。
対照的に、主人公の初恋の相手で初めての相手にもなる佐伯さん役を演じた【秋田汐梨】さんは、、、私もやられました(^◇^;)
こんなに映像映えがする10代の女優がいるんだなぁ・・と思いましたし、純粋無垢だった中学生の美少女が、ある体験をキッカケに腹の中を黒くして、男性に色仕掛けするようなカマトト女性に成長していく変化も素晴らしいです。
そしてこれは秋田さん全体から感じた印象ですが、演技が好きなんだなぁと、そういうオーラ的なものを感じました。今回で「陰」と「陽」の2パターンの演技幅を魅せていただきましたので、今後の出演作での伸び代を楽しみにしています。
(関係はないですが、この記事を書くために訪ねたレストランのお米が秋田こまち、でした)
あっ💡主人公カスガの母親を演じた【坂井真紀】さんの喚き方が良かったです。ワンポイントの出演が多いですが印象に残ります。
最後に。
漫画だからこそ書ける日本語・セリフ量を、いざ生身の俳優がそのまま演じた場合は、冷静になってしまうんだなぁ。
男性が女性を叩くのは問題ですが、逆に、女性が男性を叩くのは問題というより「衝撃的」になるでしょう。
2010年代、漫画が実写化されるようになって、アクションも増えましたし、そうなることで必然的にハリウッドみたいな熱演をする映画も増えてくる。
果たしてこのアクション(アドレナリンを出す)シーンは映画に必要なのか?と何度も思いながら鑑賞してしまいましたが、
『台風家族』などでもそうでしたが、役者同士ぶつかり合って最大の見せ場を作る演出が近年多くなっているので、こういう若手の原石がぶつかり合って磨きあっていければ、今後が楽しみになるし、いいんじゃないかな。本編の中で男女関係なく波打ち際で投げ合っているシーンがあるのですが、いいぞ、やれやれ!演技してるな!と楽しそうでしたし、一発本番の役者魂を見せてもらいました。
今後もこういう「ぶつかり合い」の演技演出が増えていくんだろうな、と思った作品です。
脚本 [13]点
演技 [14]点
構成 [13]点
展開 [14]点
完成度[13]点
[67]点
監督🎬
【キム・グエン】
主演
【ジェシー・アイゼンバーグ】
【アレクサンダー・スカルスガルド】【サルマ・ハエック】
本編上映時間〔111〕分
物語)金融の中心地シカゴの取引が発信されるカンザス州のデータセンターとニューヨーク証券取引所を、直線の光ファイバーネットワークで結び、従来以上の高速取引を実現して莫大な利益を上げるというプロジェクトが実在した。
野心家のヴィンセントと、従兄弟で天才型のアントンが目指す、0.001秒遅い回線の実現を阻むのは、一万件の土地買収、FBI、私企業との規格競争。そして病魔。果たして彼らの無謀なプロジェクトの運命はー。(チラシより)
寸評:
自分にもっとこの分野の知識があればなと後悔した作品です。
ウォール街の知識などは映画のおかげで多少ありますけれど、ネット回線などの知識は未だに頭の中でカタカナが溺れ続けてる状態です。不得意分野(^◇^;)。
同じような方が多かったのか、地元のシネコンでは2週間で打ち切りとなってしまったので、あまり客入りが良かった作品という印象も私にはつきませんでした。
主演の【ジェシー・アイゼンバーグ】〔36〕がスティーブ・ジョブズ氏を演じた際に今後は分からないと、俳優業の進退を仰っていましたが、その後は「渋めのイケメン役」として『グランド・イリュージョン』などに出演されているので、今後も銀幕で観れそうです。
今作品では、全米の株取引で光ケーブルを開通して他者よりも早い回線を実現することで莫大な利益を得るプロジェクトを行い、その代表者をアイゼンバーグ演じるヴィンセント。ヴィンセントのパートナーでコンピューターの天才アントン。演じる俳優はスエーデン出身の【アレクサンダー・スカルスガルド】〔43〕。
一万件の土地を買収し、直線1600kmの地面に光ファイバーケーブルを埋めていき、0.001秒短縮しウォール街を牛耳るプロジェクトを行った・・という実話の物語です。勿論。この話を知りません。(日本のことだってよく知らなーい)
この1600kmの工事を行うために、土地の買収や交渉などを行うのですが、基本的には大枚をはたいて契約書にサインをするスタンスで順調に掘り進むのですが、先祖代々受け継いできた牧地での工事は家主が断固として拒否します。
「金なら払うよ。工事もすぐに終わるし、地面に埋めるから場所も取らない。」
「NO。金じゃないんだ」という考え方・根本的なプライド・その訴えは、利益という欲を持つ主人公にどう響いたのかな?
エンディング前のシーンも、この先住民の農場となるので、この映画の重要なポイントだと思います。
1600kmの地面を直線で掘り進めていくので、その直線上に建つ家であり、山や谷や川などの障害も強行突破。
科学の進歩はすごいな!と思う中で、上にも書きましたが先住民族がお金よりもハイテクよりも大事なものがあると工事を拒否したりするので、アナログやステレオタイプの方が大事なんだ!と目を覚ましてくれる描写も多いです。
アイゼンバーグ演じるヴィンセントは、末期ガンを患う中で、抗がん剤治療もせずにプロジェクトの総指揮や金策に全力を賭けていきます。
咳の様子や窶れていく様子は流石ハリウッド俳優という感じですが、観ていて痛々しいというか、良い意味でも悪い意味でも、ゴールデンラズベリー賞(その年の最低の映画を決める祭典・通称ラジー賞)の最低助演賞を受賞した俳優だなという感じがしました。
脚本 [13]点
演技 [15]点
構成 [14]点
展開 [13]点
完成度[13]点
監督🎬
【真利子哲也】
主演
【池松壮亮】【蒼井優】【井浦新】【一ノ瀬ワタル】【佐藤二朗】【ピエール瀧】他
本編上映時間〔129〕分
まず初めに。
これは最初に書いた『惡の華』の評価と同じなのですが、主演女優の演技がうるさかった、という印象の方が映画内容どうこうよりも強く残りました。うるさくて、思わず耳がキーンとなって反射的に後ろに逸らしたり、ちょっと・・イヤかなり引きました。
今作で【蒼井優】はヌードを披露し、彼氏が寝ている前で強姦されたり、女優が仕事を受けたがらないスッピンでの熱演だったり、
涙・鼻水は当たり前、汚い言葉、癇癪、出産シーンでは絶叫(←最近の妊婦さんに多い)など、R指定とは言え強烈。
蒼井優は映像作品上で年上の男性(男優)に程よいタメ口を聞いて話す女優(例えば、「ダメですよ」ではなく「ダメよ」というヘルパーさん口調になるタイプの女性)ですので、オジさん受けがいいのですが、今回の作品は私にとっても衝撃。日本のトップ女優で1作品で「やりすぎる」のは彼女ぐらいだなぁとも思います。
余すことなくやりきったと思うので、来年の日本アカデミー賞に選出されれば間違いなく彼女のものでしょうね。他の売れてる女優にここまでやれとは要求自体がされないと思います。
__
90年代に連載し人気を博したという同名タイトルの漫画を読んだことがなく、昨年に放送されていた深夜ドラマも単発は見ましたが継続して見ていたわけではないです。
映画の入り方から既に何らかの関係性が出来上がっていたので、「初見で視れるのかな?」と不安な気持ちにはなりましたが、映画の結末(後ろ軸)を先に冒頭で見せておいて、交互に回想していく最近日本映画でハヤリの展開だったので分かりやすかったです。
簡単なあらすじを展開順に紹介。
冒頭は、喧嘩の後か?事故にでも遭ったのか?池松壮亮演じるサラリーマン宮本が高台の公園を息を荒げて歩いています。こんな奴が街中で歩いていたら通報されますよ。周りにお子様が遊んでいますしね。
続いて前半。サラリーマンの宮本が会社で上司と話しているのですが、前歯が3本ありませんし、腕も骨折したのかギプスをしています。上司から宮本は喧嘩をした、相手とは示談が成立した、という情報を聞きます。これは観客に状況説明するためのセリフ。
冒頭はラストシーンの後が時間軸。
前半が後ろ軸。
続いて、都電荒川線のとある駅の商店街。
こちらは歯がありますので、回想シーン(前軸)になります。
宮本は仕事帰り、年上の靖子と待ち合わせ彼女の家に招かれます。そこに彼女の元カレが訪ねて修羅場。それまで普通だったけど、猫をかぶっていたんだな・・この女性。元カレに出て行ってもらいたいとは言え、口も悪いし声も大きい。
と言うか、全体を通してですが、二階建ての安アパートで大声で話しすぎΣ(・□・;)窓も開いてるし間違いなく壁も薄い。
映画なので過剰演出は仕方ないにしても、こんなに大声で喧嘩したり、交尾を覚えた猿みたいにラブラブしたりして、よく騒音トラブルにならないなと観ていて思いました。
宮本と靖子に大事件。ある日、仕事先の付き合いでラグビー部出身の方々と交流し、その席に靖子も連れて行きます。体育会系のオジさん達は、靖子にセクハラ発言ばかり、宮本は一気飲みして酔い潰れる。靖子も靖子で、演じるのがおじさんキラーの蒼井優ですから下ネタにも上手く対応していく。またまたご冗談をホッホ。
取引先のリーダーを演じるのは元俳優の【ピエール瀧】さん。この映画で唯一、救いようのある役に思えました。
他の人物は感情の起伏が激しすぎます。特に【佐藤二朗】さんは今回はいつものボソボソ調の見せ場が少なく、なんだかとても気持ち悪すぎました!
途中で父親に呼び出され居酒屋に駆けつけた大学の日本代表に選出されたラグビー選手。
酔い潰れた宮本を車で自宅まで送り届けることに。ベッドに宮本を寝かせ、お茶を出した靖子を犯す。
翌日。靖子から報告を受けた宮本は気が狂う。草野球のラグビー版かな。詳しくないのでスミマセンm(_ _)m
ソイツがラグビー場にいると知り、殴り込みに向かうが、逆に返り討ちにあって重症に。以降、宮本はソイツを倒す(おそらく殺してもいい程の覚悟で)体を鍛え始める。
という内容と展開です。交際している相手が自分が(酔って)寝ている間にレイプされる・・かなり屈辱的・衝撃的ですし、正直その男に対して殺意的な感情になるのも分かります。
しかし宮本が殺意を抱く相手がラグビーの大学日本代表候補で、喧嘩も強く・喧嘩に慣れていて、女好き。
まさに「相手が悪い」と言った感じですけど、でもだからと言って、我慢できないですよ。男として考えて。私だってこのラグビー選手をぶん殴ってやりたい!と映画を鑑賞中に何度も思いました。
宮本はまず体を鍛えます。全ては復讐のため。そいつをボコボコにして、靖子の前で土下座させるため。
街中で逆立ち腕立て伏せをしたりするシーンは通報レベルですけど(^◇^;)
筋トレのシーンは殺気立っていて、こんな奴が街中とか河川敷にいたらヤバイなと想像出来るので、池松壮亮の演者としての良さが全て出ています。
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この映画は「現在」(後ろ軸)と「過去」(前軸)を交互に展開し、冒頭のアドレナリン全開で公園を歩いている宮本の「どうしてこうなったか?」を逆算して説明していく展開です。
こういう映画って「今どっちの時期を描いているの?」と鑑賞中に分からなくなってしまう事も、観客さんにはあると思うので、「歯あり」or「歯なし」または「怪我してる」or「怪我してない」など見た目で区別がつくのは分かりやすくていいですね。
どうして歯が抜けたのか?どうして怪我をしているのか?が本編が進む中で紹介されるから、安定して気持ち良くなれます。
もう1つの区別は、歯ありの宮本は穏やかで優しく、歯なしの宮本は何だか人が変わったように気が立っています。
事件前、事件後。キッカケがあれば人は変わります。
書き出したら歯止めが効かなくなりそうですし、文字数的にもまだもう1作品を書くので、〆に入ります。
とにかく演者のぶつかり合い。リアルな喧嘩・口喧嘩。罵詈雑言。立派なR指定。
一番衝撃的なのは、蒼井優の口の悪さが目立つ演じ方。
一番印象的なのは、後半のマンションの上階での最終決闘シーン。
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相手の股間を握りつぶすシーンがとにかくリアルでした。
スタントなしでマンションの上階の階段から落とされそうになる格闘シーン。
あとは何と言っても、歯抜けでの演技!!
映画で歯を抜いた俳優といえば、【ロバート・デ・ニーロ】や『ザ・ファイター』の【クリスチャン・ベール】が有名で、いずれの名優も最高評価でアカデミー賞を受賞しました。
失礼ながら、日本の映画で日本人俳優がそこまでするのかな?と思いましたが、実際には前歯を抜いてないそうで特製のマウスピースを着用して演じたそうです。
(クリスチャン・ベールの立場Σ(・□・;))
しかし映画を視ていて、実際に池松が前歯を抜歯したのだと思ったほど「歯抜けの喋り方」はリアルだし、マウスピース着用の口元の厚みも全く感じられず超リアルでした。本当にすごいと思います。
日本の俳優の役柄って正直一辺倒の「似たり寄ったり」でパターンがないので、熱演というカテゴリーだとこういう「起伏が激しい」キャラしかないと思います。最近はサイコパス的な役も多く役柄の幅も広げていますが、それは主役ではなく悪役。池松壮亮は普通の役でハンニバルレクターになれますから今後も最高に楽しみです。
とにかくすごい映画でした。ただ何がすごいのか?と問われれば、映画の内容よりも先に、「役者の熱演」と「蒼井優の熱演模様が引く」と私は答えます。ここまで口が悪い女性(ヒロイン)は(商業映画に限り)日本映画史上初に思えます。
伏線の回収はしっかり映画内でしていても、矛盾点は多いし、通報レベル・いや騒音レベルの大声で喧嘩しているし。それに対してラストシーンの近所の主婦ぐらいしかエキストラを登場させない「ありえなさ」。過剰演出に役者の大変熱量の高い演技合戦。今の時代には合っていない気がしますので、正当に評価できない気にもなります。
脚本 [13]点
演技 [16]点
構成 [14]点
展開 [12]点
完成度[13]点
[70]点
監督🎬
【石川慶】
主演
【松岡茉優】【松坂桃李】【森崎ウィン】【鈴鹿央士】【斉藤由貴】【臼田あさみ】【ブルゾンちえみ】他
本編上映時間〔118〕分
芳ヶ江国際ピアノコンクールに集まったピアニストたち。復活をかける元神童・亜夜。不屈の努力家・明石。信念の貴公子・マサル。そして、今は亡きピアノの神が遺した異端児・風間塵。一人の異質な天才の登場により、三人の天才たちの運命が回り始める。それぞれの想いをかけ、天才たちの戦いの幕が切って落とされる。果たして、音楽の神様に愛されるのは、誰か?(チラシより)
寸評:
主役を演じる【松岡茉優】の冒頭の初登場シーンには驚いた。
芯のない声に独特の語尾の上がり方。方言なのか?どういう口調なのか?
あまり聞いたことのない声のアクセントで役を演じているので、なんだかすごくワクワクした立ち上がりになりました。
役作りにしても、このポカーンとした「表情」(ピアノしかない+幼少期に母親を失くす)と、私の注目した「声」に特異性があって興味深かったです。考えてみれば声も楽器ですからね。原作者が恩田陸先生だし、映画の意図に声帯も隠されているのかも知れないな。
松岡茉優さんが演じるのが栄伝亜夜。エイデンさん、、珍名。
名前に「夜」を付けるとよくないって何かの情報で聞いたことがあるけど、小説や漫画では自由なので、時々見かけます。
神童と呼ばれ将来を高く期待されていたエイデンさんですが、小学生高学年時に講師でもある最愛の母親が亡くなり、コンクールをボイコット。そして映画の国際ピアノコンクールで復帰します。少女だった亜夜ちゃんはすっかり大人の女性の亜夜さんに成長。
彼女がコンクールボイコットからの数年間、どこで何をしていたのか?
空白の期間が幼少期から女性になる間なので、その点を映画から見えてくればよかったことは残念に思います。
松岡茉優の印象が強いですが、映画は主役を置かずに、コンクールに出場する4名に焦点を置き展開します。
映画を鑑賞された皇室の方に「年配」と呼ばれていた【松坂桃李】君は、妻子あるサラリーマン・アカシ役。年齢的に最後の大会と決めて臨んでいます。松坂君・・個人的に好きなんですけど、男優としては演技もさほど上手ではないし、こういう映画だとフレッシュさに欠けるので、演じる役柄の本来の設定よりも、彼の落ち着いている性格が逆に陰気に見させてしまうんですよね。
亜夜の幼馴染で数奇にも再会するマサル・カルロス・レヴィ・アナトール役にはスピルバーグに認められた【森崎ウィン】君。mAbは彼が出始めの頃から注目しているファンですけど、雰囲気から風格みたいなものが出ているように感じます。設定がルックスよし育ちの良い「王子様」で、全体を通して負けん気の強さも性格の良さもあるので、特にダメ出しも思いつきません。強いて言えば、彼メインのシーンでは時々「どこ向いて話しているんだろう?」と自分の間拍で話をしている自然体が気になりました。
そしてわざわざ「新人」とエンドクレジットに入る紹介は久しぶりに見たが、満を時して国際コンクールに初出場してきた風間塵を演じる【鈴鹿央士】さん。顔の系統からは岡田将生2世。ピアノ界の巨匠の弟子で、その先生に秘密裏に鍛えられた隠し球、風間は巨匠亡き後、日本で開催されるピアノコンクールに出場。審査員は賛否両論。実力は認めるが、型にハマらないスタイルになかなか肯定しない。そしてダークホースとして勝ち進んでいく。いかにも小説や漫画にいる登場人物だと思うが、実に面白い。
天才型の3名がオフの1日に砂浜を走り回るシーンは、彼らの境地でしか聞こえない歌があり、非常に見応えがありました。
__
以下は、鑑賞後にスマホのメモに箇条書きしたものです。
いいピアノ演奏を聴かせてもらった。
その気持ちの方が映画内容よりも強い。
ドラマとしては大したことはないが、やはり想像させることと、観客となってコンサートを聴くこと。
私は松岡茉優が演じるエイダンさんのピアノ演奏を聞いているときは、何故だか胸が苦しくなった。
実際によくクラシックを会場に聞きにいくが、LIVEでこういう感覚になったことはないので、やはりキャラクターのストーリーを紹介して感情移入感をもたらす映画ならではなのかもしれない。
その胸の苦しさが、終盤の演奏ではドキドキやワクワクに変わったのだから、演じた女優、実際の演奏者、音響、映画スタッフの音声など、たくさんの作り手の気持ちがそのまま映画で現れているような気がする。
指摘点。子役と女優の顔の系統が似ていない。この子役の少女が、成長し松岡茉優になるとは想像がつきにくい。
世界的指揮者を演じる鹿賀丈史さんのぽっこりお腹が気になりました。
エイダンさんの逃亡癖は、主催者・運営側からしたら堪ったもんじゃない!!
審査員役を演じる【斉藤由貴】さんは騒動後も多くの映画でお見かけしますが、個人的には他の同世代女優はいないのか?と思うほど、どの役も毎回同じ表情(キョトン顔)なのが気になる。
海辺のシーンはこの映画で描く数少ないオフショットだけれど、全体的にこの映画のカメラワークは独特で、自分としてはベン・アフレック主演の『トゥ・ザ・ワンダー』でモン・サン=ミシェルを訪れたワンシーンを思い浮かべた。
___
最後になります。
例年になくハイレベルになった国際ピアノコンクールを舞台に4名のピアニストを描いている映画だが、この映画の魅力としては、やはり「いいピアノを聴かせてもらった」という気持ちが締め、それが全体の感想となります。
1つの大会をじっくり描き、決勝進出者3名に照準を当てているので、映画としてブレずにクオリティも高かったです。
個人的な気分で言えば、9月10月期にシネコンで公開されていた日本映画の大半がR指定ばかりでしたので、箸休め、と言いますか・・
かつては日本映画のR指定といえば性描写のイメージでしたが、ここ数年は(テレビで描けないものを映画で描く表現の自由的)暴力性が年々激しくなっているので、野蛮で汚い言葉の連作にメンタルがやられていました(^◇^;)
このピアノクラシック映画を観て救われたし、息抜きとなったことを感謝しています。
点数的には、ブルゾンちえみさんがインタビュアー役で出演されているので35億点と言いたいところですけど・・
脚本 [14]点
演技 [14]点
構成 [15]点
展開 [13]点
完成度[13]点
[69]点
___