『サイレント・トーキョー』
監督🎬【波多野貴文】
CAST:
【西島秀俊】
【石田ゆり子】【佐藤浩市】【井之脇海】
【広瀬アリス】【中村倫也】【加弥乃】
【勝地涼】【金井勇太】【白石聖】【財前直見】【鶴見辰吾】他
栃木県某所に巨大セットを組んで総工費3億円という日本の商業映画級の予算で渋谷のスクランブル交差点を再現したそうです。(奇数の予算額は縁起がいいと個人的に思っています)
その情報を私は知らなかったので、今作品を鑑賞中は、「これ、どうやって撮影したのだろう?」と思いながら観てしまうほど、セット((良い意味で)作り物)だとは思えぬリアルさで、採点の完成度項目では大きく加点。とてもリアルでした。お見事!
昨年までは渋谷に行けば外国人がスマホやビデオを片手にスクランブル交差点を渡っていたので、外国の方が自国に帰って、今作とその時の映像を見比べても「同じところだ!」と疑わない気がします。
またテロ映画は世界では沢山ありますし、お隣の国の『シュリ』なども当時は衝撃でしたが、日本は別です。
軍隊を持たない日本で、こう云うシネコンで放映されるような本格的なテロ映画は初めてに近いです。世界でも十分、評価される出来栄えだと思います。
しかし細部の状況説明、登場人物の役割分担の部分には疑問が残りましたので、この記事は高評価と低評価が入り混じる評文になるでしょう。
おしゃれなテロ映画。
個人的には2020年度の日本公開邦画で五指に入った作品。
爆破テロが起きるのは映画の前半終わりになるので、そこまでを紹介します。
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12月24日、東京。恵比寿に爆弾を仕掛けたとTV局に電話が入る。半信半疑で中継に向かった来栖公太は、そこにいた主婦・山口アイコとともに犯人の罠にはまり、実行犯へと仕立てられてゆく。その様子を朝比奈仁が静かに見つめるなか、爆発は起きた。そして次の犯行予告が動画サイトに上げられる。「標的は渋谷・ハチ公前。要求は首相との生対談。期限は午後6時」。独自の捜査を行う刑事・世田志乃夫と泉大輝、不可解な行動をとるIT企業家・須永基樹、イヴの夜を楽しみたい会社員・高梨真奈美、そして一帯を封鎖する警察、事件を一層煽るマスコミ、騒ぎを聞きつけた野次馬たち。様々な思惑が交差する渋谷に“その時”が訪れる。それは、日本中を巻き込む運命のXmasの始まりだった。(公式サイト:ストーリーより抜粋)
時代設定はおそらく2020年前後。東京の街が舞台です。
1つだけ明らかに違う部分があるので、「パラレルワールドの日本」と言った感じで視ていました。
今作品を鑑賞する前は、「日本でテロが起きたらどうなるのか?」という現実を映画で見せてくれると予想していまして、その通りに見せてくれた「テロ想定映画」に仕上がっていますが、「日本で」という部分はパラレルワールドでしたね。
その1つとは、この映画の総理大臣が、まるでアメリカのような姿勢を崩さず、自らの信念を貫き通す人物で、この総理だったら(日本人テロリストが発生して)納得と思わせます。
この映画の与党がどの政党なのか?分かりませんけどね(^_^;)
ここだけは現実的ではないので、フィクション性が増します。
【鶴見辰吾】さん演じる総理大臣が独裁的で、軍事力のある日本という設定が背景にありそう。
だけれど劇中にテロが起きた際は、現場にいた警察は殆ど機能せず、1人の刑事だけが活躍しているので、軍事力とかそこまでの想像を伸ばす必要はないのかも。国民の防衛は警察がメイン。まぁアメリカではないんだからね。
国民⇄警察⇄テロリストの映画。ここはアクション映画。
劇中には海外派遣先での自衛隊ドラマが大きな起点となっており、その隊員の目の鋭さは日本軍のようにも感じるため軍事ドラマ。
軍事ドラマとアクション映画、この映画は2つのジャンルの魅せ方で観れます。
テロリストが爆破予告。日本はテロリストに屈さない!それ見たことか!?とマスコミ。私は間違っていない!と総理大臣。
国のトップがここまで強いのは、失礼ながら自国民としては非現実的に思いますが、軍隊を持つということは=テロリストが生まれるということに繋がると思うので、この点は現実的に考えられると思います。
「所詮映画だから」とも観る人はいますけど、最近の社会情勢から考えても、必ずしもありえない話とは言い切れなくなってきましたから、少々映画の世界と現実の世界とを重ねながら鑑賞する自分もいます。
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総理大臣以外は割とごく普通の現代劇です。
仇がいなければ戦争は起こらない。
映画の物語を作成するにあたって、憎むべき相手がいなければテロを起こせないので、そうした設定にしたのだと推測します。
そもそもこの映画。総理大臣を主要ではなく、サブ役として登場させているのが実にいいです。
先ほど書いた図です。
国民⇄警察⇄テロリスト
国民が主役の話。
警察が主役の話。
テロリストが主役の話。
この3方向を主役視点で組み合わせた物語です。
いい意味で「警察が主役の物語」は単純です。
警察は単純、犯人は巧妙、この二つが相成って複雑になる。これこそ日本のドラマ。
映画の主要キャストは、テロリストとその関係者と一般人、そして警察がメイン。
警察を舞台にはしていますが、その上や根っこの組織までは広げて描いていないので、いち警察官を主役にして、犯人を追っていくという、ドラマでも映画でも散々描かれてきた展開です。
そこは『アンフェア』の小説家と『SP』の監督。警察を題材にしたアクションドラマに長けたタッグを組んでいるので、複雑ではなく見やすいドラマに仕上がっていると思います。
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上映時間はエンドクレジットを含めて90分台と日本映画にしてはかなり短い本編時間になります。予告を入れても100分ほど。
普通は110分〜120分くらい。日本映画で3億円も制作費がかかっているなんて聞くと、私なんか勿体無いお化けが出そうで、130分くらいの上映時間を予想するんですけどね。
三度、この図を用います。
国民⇄警察⇄テロリスト
前半は3方向から主に4人の主人公を視点にしていき、後半部分で犯人の視点も(テロリスト視点の追加キャストで)メインに加わり展開します。
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「ショッピングモールに爆弾を仕掛けた」「中継カメラを持って現場に来て欲しい」という匿名の連絡を受け、報道番組の制作スタッフが2名、現場に駆けつける。どうせイタズラだろうな、と会話しながら。
現場に到着すると【石田ゆり子】さん演じる中年女性に声をかけられた報道カメラマンが、ベンチに座るよう誘導される。
言われるがまま、その中年女性が座っていたベンチに身代わりで座らるカメラマン。
「離れないで!」
ベンチの真下に仕掛けられた爆弾は、一定の重力(30kg)が無くなれば爆発する仕組みになっている、と説明された。
後輩の契約社員・来栖が、ベンチの下を確認する。
(役を演じた男優さん。お名前は存じ上げませんでしたm(._.)m お名前が【井之脇 海】とあったので、キャスト一覧を見た時に女優さんだと思い込んでいました。カイさんと読むそうです。ジャルジャルの後藤さん系統のお顔立ち(^ ^))
顔面蒼白になったカメラマン。この所定の位置から動くことが許されなくなった。
中年女性は座るカメラマンに「この状況の映像を放送して」と指示し、彼の後輩である来栖の手を引き「あなたは一緒に来て」と、警備員室に駆け込む。
昼下がりの平和なショッピングモール。平和な日本ということで警備をする側も気を張った状態ではない。
母親と息子くらい年の離れた2人の男女が、必死の形相で警備室に入って来て「爆発するから避難するよう、今すぐに館内にアナウンスしてくれ!」と大騒ぎしても、即座に「はい、分かりました」で対応できないと思う。そもそも現実的に、今の時代は迷子のアナウンスだって館内放送で聞かなくなったでしょ(⌒-⌒; )
この警備員の対応の仕方も、この場面だけの登場でしたが、リアルで良かったです。
映画では、この頃の東京で爆発物が見つかったり、大規模テロの前兆がしっかり起きて(描かれて)いるのだが、前述の通り総理大臣はテロリストには屈しない姿勢を見せ、一切の要求には応じないため、それほど大きく報道されていません。
(作中に爆発物騒ぎが起きた舞台地は浅草寺なので・・・私の地元なのだが_:(´ཀ`」 ∠):)
映画の最初の見せ場となる、恵比寿のショッピングモール爆破テロが起きるまでの間。このモール内で不審な動きをする男たちが登場している。犯人は現場にいる。王道こそ正義。
【佐藤浩市】さん演じる黒の革ジャン紳士。モールを見渡せる喫茶店に入店。ウェイトレスへの当たりは柔らかい。
時間を前後し【中村倫也】君演じるIT社長は、同じくモールを見渡せる喫茶店にて、【野間口徹】さん演じる謎の人物から、頼んでいた秘密のブツを渡される。ウェイトレスへの当たりは素っ気ない。
日本の映画作品では知名度の低い俳優を重要な役に起用することはまずない。
従って、この2名が今回の爆弾テロに深く関わっていることは、想像などしなくても安易に分かる。
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ショッピングモール内で発生した爆発騒動事件により警察の登場だ!!
発生場所が恵比寿なので渋谷署の管轄。
(東京23区。どこの区も事件が多くて大変そうだけど、渋谷署に配属されたら・・腹の中では何を思うのかな。毎年ハロウィンの時期は署員総出なのかな?と気の毒に思ってニュースを見てます。)
刑事役を演じるのは【西島俊秀】さんと【勝地涼】の2名。
見た目40代と30代。先輩後輩の間柄。基本バディで行動する。
最近の刑事物は単独行動の突っ走り系が目立ちますが、ちゃんと2人で行動するのがいいですね。
恵比寿の爆発物騒ぎ後、2人は現場を離れ、周辺の聞き込み調査に出かける。
国道の喧騒から離れた閑静な高級住宅街。刑事はスレ違った通行人・中村倫也君演じるIT社長・須永を追いかける。
刑事の勘ってやつなのか?
刑事は全ての人物を疑ってかかると言うけど、この映画に関しては、最初からあいつ怪しいなという空気感で職務質問。
爆発騒ぎ→刑事が区内を歩き、人通りの少ない道で通行人男性(主役)に声をかける・・・まるでヤラセみたいな展開(^_^;)
たとえ昼下がりの住宅地だとしても、もう少し通行人のエキストラがいる中で、ピンポイントで声をかける方が刑事ドラマを描くなら現実的。でもまぁ・・平日の午後に働き盛りの男性が住宅地を歩いていたら不審に思うかな。
刑事の質問にも表情1つ変えず、冷めた目をして対応するその様子からは、怪しさがビシビシ伝わってくる。
私が前々から書いている西島秀俊さんのハ行の発音の際に息が漏れたように聞こえる滑舌は今回、気にならなかった。
この刑事も、恵比寿爆破騒ぎ後、他にも聞き込みをしているのだろうけど、劇中では中村君以外に声をかけている様子が描かれていないので、なんだか本当にピンポイントで的を絞りすぎて描きすぎ。刑事の描写は加点が少ないです。
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IT企業家・須永は、若くして成功し、経済誌の一面を飾るような人物。
劇中には上京した母親が再婚相手と東京旅行に来ていて、ホテルのカフェで膝を突き合わせてお茶をします。その様子から母親思いの好青年なんだな・・と彼のギャップを感じる場面が用意されています。
90分台の短い上映尺の中で、この場面を入れるのですから、どうしても必要(重要)な場面なんだと思いながら鑑賞しました。
テロが起きる現場の近くには必ず彼がいて、「冒頭」から心ここに在らず状態に意味深な行動を起こしているから、彼がこの映画の中心なのは間違いない。
その冒頭、社長と合コンで知り合うのが【広瀬アリス】さん演じる都内のOL・マナミ。
【加弥乃】さん演じる同じ職場の同僚とOL・アヤノと2人で参加している。
目の前の席が社長。
3人ってことはないだろうなぁ・・。
複数人で同じテーブルに座っているのだろうが、画角に引きの絵がないので、3人で三角のように会食になって見える。
どういう集まりなのか、何人で食事会しているのか、全く分からない。
リアルを考えれば、彼は銀座の社会人ナンパスポット・コリドー街で名刺を配る様な人物でもないし、そこまでの社交性はない。
一般のOLがヒルズ族の様な男性と合コンしている状況なので、経緯や幹事も知りたい。
男性はスーツ姿でなくても、カジュアルな服装で高級レストランに入れているので、おそらく会員制なのだろう。
男があんな軽装で高層階のレストランで食事しているのだから、普通に考えて、店側が存じていて顔パスできる有名人だと考えるのが妥当だろう。
こういう些細な箇所に私は拘る。
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テロリスト、怪しい人物、政治家、警察。
これだけでサスペンス・アクション系のジャンルは成立するはずですが、そこはやはり日本映画の性。
ここに付け加えるのが、事件に巻き込まれるヒロイン女優。この非現実的な存在(キャラクター)が映画の醍醐味です。
この映画のヒロインは先ほども紹介しましたが、【広瀬アリス】さんが演じるOL・マナミです。
日本人離れした鼻筋が気になりますが、演技力だけなら妹さんを超えています。口を縦ではなく横に開くので演技が大きく視えるのでしょう。映画の番宣でバラエティ番組によく出演されるので、リアクションの大きな女優さんの印象も私にはあります。
OLマナミかぁ・・・個人的に違和感が凄かったのが、このキャラクターです。
彼女の役割こそ分かりますが、正直役割以外は、なんだかよく分かりませんでした。
映像化の前に、原作となった小説や舞台版もあるそうですから、そこではもう少しヒントがあるのかな?
全くの所見で映画を見ると、彼女が演じた役柄は「駄作の域」でした。説明します。
【中村倫也】君演じる社長がテロ事件のキーパーソンになることは、映画の冒頭から匂わせ続けているので、映画が進むうちに必ず見せ場があり、伏線を回収していく事が予想出来ます。
OLマナミは友人のアヤノと参加した合コン先で、ハイスペック男子であるIT社長・須永の前に座りトーク。
親友アヤノが彼のことを気になっていると直感したマナミは、この席で徹底して間を取持ちます。
新進気鋭のIT社長・30代・都内高級マンション住み・塩系イケメン。
マナミは見向きもしない。タイプじゃなかったのかな?女の顔もしない。
女性同士だから嫉妬とかあるのかな?と思いながら見ていたのですが、自身は恋活をしていないので、人数合わせの合コンなのかな?とも(^_^;)とにかく純粋に親友アヤノの恋路を応援する。
翌日、合コンの帰りにお持ち帰りされ、彼の家でまったりしたよ、と報告を受ける。
え!それでそれで!?と女子トーク。
お家には行ったが、それ以外の進展はなかった。
それを聞いたOLマナミは、プッシュあるのみ!と、すぐさま渋谷にある予約の取れないレストランを思い浮かべ、これから電話して当日予約が取れたら彼を誘うべし、取れなければ誘わないでおこうと提案。わかりました。
(自宅まで招かれたんだから、そっと親友の恋路を見守ればいいのに・・とは思うけど(^_^;))
予約の取れないレストランですが、この日の渋谷の街にはテロ予告が出ているので空席が出た模様です。こういうところは現実的ですね。
それきっかけに須永をデートに誘いますが、電話口で用があるからと断られ「そうですか・・」。
クリスマスイブに誘って、用があると断られたのだから、ガックシ。
せっかくだからと私達で行きましょうよ!と、女2人で仕事終わりに渋谷に向かう。
(マナミも予定ないんかーいΣ(゚д゚l)!!)
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渋谷駅に到着。大混雑する東京メトロ駅構内。
渋谷の街はセットという事なので、地上のJRは本番で使うため、ここは地下鉄を選んだのかな。
地下鉄の改札・通路は大混雑。「すごい人だね」
この人混みの流れが、渋谷の街に行くのか、渋谷から離れるのか?は分かりません。
こういう箇所も会話なりなんなりで描いて欲しいところ。
ねぇ。本当に爆発が起きたらどうするの?怖いよ。
彼女はめっちゃ怖がってます。そりゃあそうですよ。
昼間に恵比寿で爆発が起きて、同一犯が同日に爆破テロを起こしますと宣言し、ニュースで報道されているのにも関わらず、あえて渋谷にやってくるなんて。
好奇心と怖いもの見たさは紙一重で違います。
この2人の女性、人間の感覚や価値観がハッキリ分かれて、描かれています。
テロが発生する時刻は予告されているので、その時間にその場所にいなければ大丈夫だ、とOLマナミは手を引いて地上に上がる。
(このお二人が並ぶと、【広瀬アリス】さんが彼氏、【加弥乃】さんが彼女に見える。)
怖がっている親友を、大丈夫大丈夫と強引に連れて行くこのOLは、男前というか・・本当に社会人なのか?と「若者のノリ的」に感じてしまいます。
地下鉄の通路内。人混みの中でIT社長・須永を発見し尾行。「横浜に行くって言ったのに、どうして渋谷にいるのよ!」親友の誘いを嘘をついて断った男。激おこぷんぷん丸。嘘を付かれた本人はショボン。
映画を観ながら「IT社長なのに車ではなく地下鉄を使うんだ・・」と映画を見ながら思うところがあったが(笑)彼を尾行していくうちに地上に上がっていく2人。
(エキストラの容姿が渋谷系じゃないΣ(゚д゚lll))
2人のOLは彼を尾行しながら、気が付けばスクランブル交差点周辺にいて。。
「その時間までに離れるから大丈夫よ」と言っていたのに、どうしてまだいるのでしょう??
そして定刻。テロリストの宣言通りテロが発生するのです。
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細かく書き過ぎて長くなりましたが、ここまでは特に問題なく観ていたので、ここから下が私の違和感です。
JR渋谷駅前大規模テロ事件後、生き残ったOLマナミは、他の犠牲者・負傷者と共に病院に運ばれ、手当てを受けます。
私が渋谷に行こうと誘わなければ・・・自分の行動を振り返ってガクガクと体を震わす。そして元凶を思い出し、病院を飛び出す。
(こういう予期せぬ事故やテロの時って、治療費とか手続きってあるのかな?)
次のシーンでは、IT須永のマンションに押しかけて「さっき渋谷にいたでしょ。私見たのよ!」と詰め寄るシーンになる。
須永が自宅のリビングにいるとインターフォンが鳴り部屋の玄関へ。玄関を開けると、爆発のススで顔が真っ黒になり、傷だらけのOLマナミが立っている。
・・・いやいや、ちょっと待って(^_^;)ちょ、待てよ!
(なぜキムタクΣ(゚д゚lll))
よく、ここに来れたなΣ(゚д゚lll)
家に入ったアヤノなら兎も角、マナミは彼女から話を聞いただけで、おそらく彼の連絡先も知らない。
それなのに、どうして彼の住所(&部屋番号)を特定して訪ねられる?のかもこの映画では一切描かれていないし、
仮に彼女の携帯から電話番号を仕入れたとしても、住所までは分からないはず。
病院→次のシーンで、彼の部屋の前に飛ぶのは絶対に説明が必要だ。
そもそもセキュリティのしっかりしたマンションなのに、オートロックを突破して、いきなり玄関のピンポンを押して対面なんて、本当に訳が分かりません。爆発後で顔がスス汚れた状態なのに、高級マンション内に入れるの?
(前半、西島秀俊さん演じる刑事がこのマンションでオートロック機能を介して部屋にいる彼に連絡しているので、伏線になってくると思ったがそれすらない。何、マナミ、火事場の馬鹿力で高級マンションに侵入したの??)
広瀬アリスさんが迫真の演技を見せるので、映画鑑賞中は誤魔化しが効いて感情移入しながら観れる人がいると思うけれど、
映画製作費に3億円かけるなら、このくだりも用意して下さいと心の底から思いました(´⊙ω⊙`)!
OLマナミは、その足で渋谷署に行き、西島秀俊さん演じる刑事と接触するという流れ。事件解決に向かうための橋渡し的な役目もある一般人(ヒロイン)ですが、せっかくいい映画に仕上がっているのだから、もう少し役柄の設定を固めて欲しかったです。
原作の小説がある様なので、そこではこのキャラクターが、ちゃんと辻褄が合って描かれていたらいいなぁ。。
映画に関しては、良作を駄作にし兼ねない役柄でした。
(ということは、須永のマンションは渋谷区になる。)
(被害に遭うのがアヤノではなくマナミにして、配役を逆にした方が成立したのではないかな。)
昨日今日知り合った男女の関係性で、ここまで感情を表すのは無理があるし、凄く他人感に私は感じてしまいますね。
せめて「合コンで知り合った」という設定ではなく、アヤノと須永はもともと夫婦という設定にして、伴侶には黙って長年計画していたテロを今回起こしたなどにした方が説得力を設けられるかもしれませんね。
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映画冒頭。
JR上野駅の歩道橋に立ち、OIOIのテレビモニターを見ながら革手袋で握りこぶしを作る犯人の手だけアップが映ります。
総理大臣が記者の質問に答えている映像です。
映画とは関係がありませんが、革手袋の音って個人的にフェチな音です✌︎('ω'✌︎ )
ギギギのSE・・音だけ別撮りで録音したんだろうなぁ。
冒頭の映像により、この映画でテロを起こすテロリストは、決して愉快犯や快楽殺人鬼ではなく、今の政治に対して憤りを感じている人物であることが予想出来ると思います。
テロリストの要求も「総理大臣と話がしたい」「そうすれば爆破は止める」
聞き入れない総理。結果ドカン。マスコミ「あなたが悪いんじゃないですか?」
自分以外の「人のせい」にしたいんだろうな。
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テロの主犯も加害者も被害者も警察も、90分台という短い本編時間のわりに描かれていたと思いますが、どうしてもOLマナミの誘導行動には消化不良感を感じざるを得ません。
仮にこのOLがこのテロを経験したことで、復讐心が芽生えて、映画のテロリストの様に攻撃的な人格に変わる設定にするのならば、高得点をつけたと思います。
また本編中に爆破が起きるたび、黒画面が現れアナログな文字が浮かび上がります。世代的に『バトル・ロワイヤル』を思い出します。90年代から続く手法なので、この犯人は昭和生まれなのかなと推測。
ワードセンス的にテロの犯人が中年であることがここから分かりますが、こういう作中の文章って、物凄く心に響くってワケでもないけど、しばらくテロップの文字を読んでしまうんですよね。
老若男女、劇場の観客すべてがテロップを読み切ったと思われるタイミングで次のシーンに切り替えているので、数秒間の計算は秀逸。
登場人物たちに都合のいい誘導的な展開や設定など、気になる箇所はございますが、全体的に纏まっていて日本映画として規模が大きいので、A-RANKにしました。
特に、スピード重視の作風なのに、爆破の瞬間だけスローモーションとなる編集は、緩急を感じたし技術面で堪能させて頂きました。
文句はあるけど(笑)文句なしです!!
最後に。
この映画は海外(東南アジア?)で爆弾処理活動を行う自衛隊員に焦点を当てて描く一面もあります。
時代設定は逆算して25年ほど前。20世紀末辺りです。
どこの国が仕掛けた爆弾なのかは描かれていません。そこを限定して描くと色々とややこしくなりますからね。
人類が発明した爆弾。それは世紀の大発明です。
日本はその世紀の大発明の集大成とも言える爆弾を2都市に落とされ、1世紀に渡り苦しんできました。心の傷は簡単には治りません。
この映画の爆破テロの犠牲者は渋谷に集まる若者でしたが、爆破予告が出されているのにも関わらず渋谷に行き、ユーチューバーも挙って中継を始める。自分の身は自分で守る行動も見られず、状況判断も出来ていない。
それなのに怪我をしてから、命を落としてから、「行かなければよかった」とひどく後悔している。自業自得の様にも思えますし、悲しむ家族も沢山いるんだろうなと想像しました。
現実に重ね、見方を変えれば、
コロナ渦の緊急事態宣言下でも繁華街や観光地に集まる状況と、この映画の内容とが酷似しているため、嫌でも連想してしまいます。自粛警察の頭の糸がプツンと切れたら、こういう事件を起こすんじゃないか?と私は少し怖い未来を想像をしています。
そして、この映画はテロ想定映画とも言えるので
日本でテロが起きるとするならば真っ先に想像するのは五大都市。
場所を限定すれば、ビジネス街や、若者が多く集まる都心部の街が舞台とされるでしょう。
こうしたテロが日本で起きることが、この先ないとは言い切れません。
「だから警告しただろ。警告したのに、どうして来たんだよ。」
最後は、映画のエンディングの余韻の様に、文章を作ってみました。
意味深な作品です。
脚本 14点
演技 15点
構成 12点
展開 13点
完成度14点
[70]点
【mAb】